怪物事変 夢小説
□第四話 「任務」
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「マスター探偵もやってるんですかあ?そりゃちょうどいいや」
「マスターじゃないけどね…私物なんだからあんまり飲むなよ」
怪物のニオイをつけてやってきた人間の客はカウターでベロベロになりながら鼓八千に一方的に話しかけている。
泳美は苦笑いを浮かべながら鼓八千の隣にいた。
夏羽達は鼓八千達から少し離れたテーブルに座り話をしている。
「そう言えば、なぜ事務所の半分が店になってるのか理由を知らない」
「昔の名残なんだと。俺らを拾う前は相棒と泳美さんと探偵業やってたんだってさ…店もその人の趣味らしい」
「隠神さんは興味ないって放ったらかしだけどね… 泳美さんはお酒をそんなに飲まないから隠神さんに会釈するくらいみたい」
「相棒?」
「今どうしてるのかは知らねー…隠神さんと泳美さんに聞くなよ〜野暮だし」
「わかった」
「いいから聞いてくださいよ〜〜〜〜…」
織と晶から話を聞き分かったと頷く夏羽。
紺はただ黙って3人の話を聞いていた。
すると客が嘆きながら鼓八千と泳美に話を聞いてくれと大きな声で言いはじめる。
「ぼくね…好きな人がいるんですけど、その人のことなんにも知らないんです。本名とか連絡先とか…」
「嫌われてんじゃねーの?」
「そんな事ない!彼女はすごく優しいんだ!もっともっと彼女の事を知りたい…この苦しい胸の内を伝えることができたなら……」
織にそう言われ、客はそんな事ないとテーブルを叩きながら強く言い両手で自分を抱きしめながらナヨナヨしている。
「それって恋だね!」
「そう!恋だっ!」
「こい?」
「鯉!」
晶の言葉に恋なんだと言う客。
夏羽と紺に関してはそれぞれ違う認識をしている。
「ちょっとトイレ…」
『あの奥ですよ』
「紺も鯉は好きだ!特に、公園の鯉はまるまると太っていてうまい!」
「その鯉じゃねーッ!!」
「素敵じゃない♪応援してあげようよ!」
「ッ!;;」
晶の言葉にげっ!という反応をする織。
そんな織を知らんぷりするように話を続ける。
「ボク、恋のお話だーい好き!いいじゃん!織だって、人間のお父さんと怪物のお母さんが恋して生まれたんだよ?」
「ッ!やめろや気持ち悪い!!」
「恋して生まれた…」
晶の言葉を聞いていた夏羽はおもむろに椅子から立ち上がり鼓八千と泳美がいるカウターテーブルに近づく。
「ん?どうした、夏羽」
「晶が言いました…半妖は人と怪物が恋をして生まれたと。恋を知れば、俺の両親について何かわかるかもしれません。あの方に着いて行けば、俺にも恋ができますか?」
純粋に聞いてくる夏羽に鼓八千も泳美もどこから説明したものかと一瞬黙ってしまう。
「……それはお前次第だろ…やる気があるなら、この件はお前に任せてもいいがね…」
『(どこから突っこんでいいのかわからない……);』
泳美と鼓八千は同じ事を思いながら夏羽を見ている。
そんな2人に夏羽は是非やらせてくださいとお願いをした。
しばらく黙っていた2人だが、鼓八千がそんな夏羽に口を開く。
「よし…じゃあ織、晶、お前らもサポートしてやれ」
「サポートぉ?…」
「それから狐娘」
「紺だ!」
「…紺。お前夏羽の首がほしいって言ってたな…うちの仕事を手伝えば、報酬としてくれてやるが?」
「本当か?!」
「『ちょっ!隠神さん!!/ 鼓八千さん!!』」
そんな事を言う鼓八千に織と泳美が声を揃えて鼓八千に言う。
織はガタッと椅子から勢いよく立ち上がり、鼓八千と泳美の元まで向かう。
「マジで言ってんのかよ!何か考えがあんだろーなっ!!」
「大丈夫大丈夫…それに、恋を知るなら女の子いた方がいいでしょ?」
『…面白がってるでしょ、鼓八千さん』
泳美にジト目でそう言われあははと軽く流す鼓八千。
そんな鼓八千にまったくもうと呆れる泳美。
すると客がトイレから帰ってきたので鼓八千が説明をはじめる。
「お客さん、こいつらで良ければ、お宅の恋路…格安で応援させてもらうが…どうだい?」
そう言う鼓八千に客は流石に子供はまずいよと言っている。
だが夏羽は任務は必ず遂行すると客に言う。
「そう言うことじゃなくて……お姉さんじゃダメなの?」
『…へ?』
ずっと黙って成り行きを見ていた泳美に客がいきなり声をかけてきた為変な声が出てしまう。
『なっ、なんで私?;』
「だってほら、お姉さんマスターの恋人でしょ?それに大人の女性の方がわかる事も多いんじゃないかと思って…」
確かにと思わさせる言葉だが、鼓八千はそれを良しとしなかった。
泳美も私じゃとあわあわしていたため、客は仕方ないと夏羽達に向き直る。
「しょうがないか……じゃあ明日大丈夫?僕夜野っていいます。新宿東口に夜の…」
そこまで言うと急に黙ってしまうお客の夜野。
夜野の足元にはネズミがいた。
それを見た夜野はいきなりネズミに飛びかかり口にくわえ、猫のように捕まえている。
それを見ていた泳美達はびっくりした顔をして夜野を見ていた。
「ごめん、ネズミがいたからつい…集めてるんだ。いつか彼女にプライベートで会えたとき、プレゼントしようと」
猫のような仕草をしながら夜野は自分の腰に付けていた鞄の中身を泳美達に見せる。
中には死んだ何匹ものネズミが入っていた。
これには織もげっ!と声を出して引いており、晶は顔を真っ青にしながら口に手をあててトイレ〜!といなくなってしまう。
夏羽と紺はさほど気にしていないのかビクともしておらず、泳美も少し引いてはいたもののそれほど気にしていないようだ。
「ありゃりゃ…猫憑きだったか…」
「猫?」
『うん…”猫又”のしわざだよ。美男美女に化けて人間を誘惑する怪物なの…』
「こりゃ実らぬ恋かな…」
「恋とは、木に成ったりもするのですか?」
『えーと…;』
夏羽のまたも純粋な質問に泳美は困りながら鼓八千に顔を向け助けを求める。
「うーん…そうねぇ……」
『鼓八千さん!適当な返事しないで!』
「ねずみをつかまえてきた!首をよこせ!」
「よーし、紺はもう1度仕事内容のおさらいだ」
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「あ〜怖かったぁ……」
『晶』
「?」
事務所にあるトイレから怖かったと言いながら出てくる晶に声がかかる。
名前を呼ばれて顔を上げれば鼓八千と泳美がいつの間にか事務所にきていた。
鼓八千はコーヒーを飲みながら口を開く。
「お前今回はやめとけ」
「えっ…なんで?!」
「お前怖いのとか気持ち悪いの苦手だろ?織や夏羽がピンチになった時、怖い相手でも助けられるのか?」
「そっそれは……」
「明日は俺と泳美の事務作業を手伝ってくれ…な?」
そう言う鼓八千は晶に近寄り頭にポンと手を置く。
「……ボク、足でまとい?」
『そんな事ないよ!かわいいのが相手だったら晶が1番強いでしょ?』
「…だよねー!♡」
今度は泳美に頭をよしよししてもらいながらそう言われ、落ち込んでいた顔を上げ笑顔に戻った晶。
「ボク、事務作業がんばる!とっておきのかわいい付箋使うね!アルパカのやつ!♪」
「…狸のはないの?」
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