怪物事変 夢小説

□第三話 「狐」
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愛おしい温もりを感じながら鼓八千はふと目を覚ます。
腕の中にはスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている泳美。
鼓八千はしばらくそんな泳美を眠そうな目で見つめていたが、そろそろ起きるかと泳美を起こさないようにゆっくり腕を抜きながらそっと起き上がる。
だが鼓八千の温もりが消えたことで目を覚ましてしまった。


『…ん……鼓八千…さん?』

「あっ、悪い…起こしちまったな」

『ううん…大丈夫…』


そう言いながら眠い目を擦る。
そんな泳美に鼓八千は微笑みながらベッドから上半身を起こし、サイドテーブルに置いてあったミネラルウォーターを取り泳美に差し出した。


「ほらっ、喉乾いたろ?なんせ散々”鳴いて”たからな」

『っ!?///// こっ、鼓八千さんが激しいくすr…ッ?!』


ニヤニヤしながら鼓八千に言われた泳美は一気に顔を赤くさせバッ!…と勢いよく起き上がり反論しようとするも激しい痛みが腰を襲い突っ伏してしまう。


『いっ痛いぃ〜〜〜〜!!;;』

「そりゃああれだけ激しくすればなぁ…」

『だっ、誰のせいでっ!////;』

「ん?じゃあ泳美は嫌だったのか?あんなに気持ちよさそうにして鳴いてたのも全部演技だったってことか?酷いな〜泳美……鼓八千さんは久しぶりにお前と体重ねられて嬉しかったのに……」

『…ッ?!ちっ、違っ!……/////わっわた…しも、鼓八千さんと最近こういう事できなかったから…寂しかった…よ?だからっ、求められて嬉しかったし!…きっ、気持ち…よかった…/////』


誰のせいで腰が痛くなったのかと涙目になりながら照れて言う泳美。
しかし俺だけだっのかと落ち込みながら言う鼓八千に慌てて違うと言い本当の気持ちを伝える。
しかしなかなか返事が返ってこないので心配になり俯いていた顔を上げチラッと鼓八千の顔色を見る…すると、そこにはニヤニヤしながらなんともまあ嬉しそうな顔をする鼓八千がいた。


『なっなっ!?/////』

「そうかそうか〜♪ 泳美も同じ気持ちだったんだな〜嬉しいぞ〜♪」


まんまと鼓八千に騙され声にならない声があがる。
バカバカと先程よりも顔を真っ赤にさせながら半泣きでポカポカと鼓八千を叩く泳美。
だがまた激痛が腰に走ったので枕に顔をうずめる。


「大丈夫か?あんま無理に動くな…今日はベッドでゆっくり休んでろ」

『え?でも…』

「夏羽達の事か?あいつらならある程度の依頼なら入っても大丈夫だろ。危なそうなら俺もついて行くし…」

『夏羽くん達のことを信用してないわけじゃないよ?ただ心配で……それに……』

「俺と離れるのは寂しいか?」

『っ!……う…ん……』


心を読まれた泳美はなんとも言えない顔をする。
そんな素直な泳美に愛おしそうに見つめながら鼓八千は泳美の頭を優しく撫でる。


「俺がお前を置いて何処かへ行くことはないよ…そりゃあ1日で終わるような依頼なら俺が行くか夏羽達を連れて行くけど、何日もかかる依頼はちゃんと泳美も連れてくだろ?大丈夫…”もう二度と一人”になんかさせねーよ」

『っ!!……うん!』


鼓八千にそう言われ一瞬驚き、涙を浮かべながら嬉しそうに微笑み返事をする泳美。
そんな泳美を見ていた鼓八千も同じように微笑む。


「ほれっ、ちゃんと水分とれよ?…それと、さっきから丸見えだぜ?」

『?……っ!?/////』


言われた言葉に何が丸見えなのか一瞬分からなかった泳美だが、自分が今裸で上半身を布団から出していることに気づき急いで布団をかぶる。
鼓八千はいい眺めだったのに〜とニヤニヤしながら言う。
泳美は顔を真っ赤にさせながらキッ!と鼓八千を睨むが鼓八千からしたら可愛いだけだ。


「さて、そろそろ夏羽達のところに行くよ。今日は約束があるからな」

『?約束?』

「そっ、夏羽を飯生に会わせるんだ」

『えっ?!どっどうして?;』

「ん?だってほら、あいつ警察に権力持ってるだろ?依頼なんかでも色々世話になるし、せめて挨拶くらいわな」


ベッドから立ち上がり服を着ながら淡々と説明する鼓八千。


『そうだけど…まさか、一人で行かせるの?』

「いや、織と晶に付き添うように頼むよ。俺は別の用事があるからな」


顔を少し真っ青にしながら聞く泳美に苦笑いを浮かべながらそう言う鼓八千。
織達がいるならと少しホッとし胸をなでおろす。
いつもの服装に着替えた鼓八千はそんな泳美に近づき腰をかがめ、額にちゅっとキスをおくる。


「じゃあ行ってくる。留守番よろしくな?」

『うん、行ってらっしゃい』


こまめに水分は取るんだぞと言う鼓八千にはーいと返事をし見送る泳美。
鼓八千が部屋を出て扉を閉めてから泳美は再び枕に突っ伏し、夏羽達は大丈夫かなと心配しながらも徐々に眠気に襲われ、ゆっくりと瞼を閉じて夢の世界へと落ちていった。







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