怪物事変 夢小説

□第二話 「怪物屋」
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━━━━━シャアアアアーーーー……



事務所に帰ってきた泳美は鼓八千と夏羽とわかれお風呂場に行きシャワーを浴びている。
所々色白の肌に鱗が浮かび上がっているが湯船につからなければ脚は人魚の鰭にならないため水浴びも兼ねて体の汚れを落とす。


『(あそこから夏羽くんを連れてこれて良かった。皆と仲良くなれるといいな…)』


あの村も人も陰気臭くて早くあの村から出たかった泳美。
周りの夏羽を見る目や言葉が嫌だった。
昔の自分とも重なってしまい、なんとも言えない気持ちになっていたのだ。
だが鼓八千は”あの時”のようにどんな形であれ夏羽を助けた。
泳美自身夏羽を助けたかったので鼓八千の行動を再び思い出し嬉しく思い少し微笑み、シャワーを止めバスタオルでよく髪と体を拭き下着の上から白色のベビードールのネグリジェを着てお風呂場を出た。






━━━━━━━━カタカタカタカタ……




お風呂場を出て泳美が向かったのは雑用をかたずけるため二人の自室のPCに向かう鼓八千の元だった。
鼓八千は部屋の扉が開く音に気づきPCに顔を向けたまま泳美に声をかけた。


「泳美か、シャワー終わった?悪いがあともう少しかかる。先に夏羽のとこに…」


行っててくれ…と最後まで言えなかった鼓八千。
泳美が鼓八千の首に腕を回し抱きしめてきたからだ。
いつも使っている石けんの匂いや泳美自身の匂いが鼓八千の鼻をかすめる。
まだ少し湿っている腕に、PCから手を離し鼓八千は自分の手を置いた。


「どうした?寂しくなった?」

『…………そうかも』


冗談交じりに言ったはずが肯定され少し驚く。
鼓八千はPCに向けていた体を泳美の方に椅子ごと振り向き泳美を自分の膝の上に座らせる。


「どうした?やけに素直だな、なんかあったか?」


言いながら泳美の髪を梳くように撫でる。
これは鼓八千が泳美を愛おしみ心配しながら話を聞く時の昔からの癖。泳美は撫でられる感触が気持ちいいのか身を任せている。


『……ちょっと…ね、昔のこと、思い出しちゃって…』

「昔?」

『夏羽くんの時みたいに、鼓八千さんが私を助けてくれた時のこと…。夏羽くんとは全く状況は違うけど、それでも助けてくれたことは一緒だから。夏羽くんを助けて連れてきてくれて…ありがとう』


まるで夏羽の変わりにお礼を言うような、自分の事のように嬉しそうに微笑む泳美を見て、鼓八千は少し驚いていたが直ぐに笑顔に戻り口を開く。


「助けたって言うなら泳美も一緒だろ?俺だけじゃない。…あの二人が夏羽と仲良くなれるといいな」

『うん』


お互い微笑み合い、見つめ合いながらどちらからともなく唇を合わせた。










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