怪物事変 夢小説
□第一話 「夏羽」
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「なあなあ!東京から人来るってほんま?!」
「やっちゃんとこに泊まるんじゃなー!」
「どんな人なんじゃろ?」
「もしかして、スカウトされるんじゃねー?!」
「なんで?」
「だって、やっちゃん頭ええし足速ええし、お金持ちじゃがー!」
「君はこんな田舎より東京の方が似合う。一緒に来ないか?……なーんて!」
「ふっ」
「なぁ、後で東京の人、見に行ってええ?」
「ちょっとだけじゃけぇ!」
「お客さんの邪魔せんかったらな」
「「「よっしゃー!!!」」」
「……ん?泥田坊!お前は来んなよ!東京の人鼻もげたらわやじゃ!」
「「「アハハハハ!!」」」
「…ああ、気をつける」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……
「うぉい勘弁してくれよ!こんなところでパンクなんてよぉ…」
『どうしよう…』
━━━━━━ピッピ!! ..
どうしたものかと悩んでいた鼓八千と泳美の後ろから車のアラーム音が響き二人してそちらを振り向く。
そこには軽トラックに乗った女性が窓から顔を出し二人に声をかけた。
「あんた達、東京の?」
「依頼人さん?」
「鹿の子荘の女将です。後で人呼びますけえ、取り敢えずこっちに。話は車の中で」
『良かった!ありがとうございます!』
助かったと二人して笑顔になり女将の軽トラックに近づく。
「あっ でも二人乗りやけ、どないしましょ…」
「大丈夫です、俺の膝にこの子は座るんで」
「『え?』」
「なんで泳美まで驚いてんだよ」
『そ、そりゃ驚くでしょ!私はてっきり鼓八千さんが後ろに乗るのかと』
「後ろなんかに乗ったら依頼人さんから話聞けないだろ?」
『じゃあ私が後ろに…』
「お前日光苦手だろーが、いいから二人で前に乗るぞ。いいですかね女将さん」
「えっ ええ、私は構いませんが…」
「決まりだな」
『でも…きゃっ!』
でもと言う泳美の腕を鼓八千はひっぱり先に自分が乗り、その膝に泳美を無理やり横向きに座らせる。
『ちょ、ちょっと鼓八千さん!///』
「なーに今更照れてんだよ。いいから大人しく座ってろ」
『うぅ…』
「あ、あの…」
「ああすみません女将さん。出発しちゃってください」
「分かりました」
なんやかんやありはしたが無事二人は女将の車に乗ることができた。
泳美は大人しくなったものの恥ずかしさから頬を赤く染め鼓八千の顔を見れず横向きに座っている事もあり窓の外の景色を静かに見ていた。
そんな泳美を見て愛おしそうにクスッと小さく鼓八千は笑い泳美が被っている大きい白の帽子を取り頭を優しく撫でた。
「腐っとるんです、死体が…。昨日まで動きょうた家畜が一晩でですよ…人間にそんな事できますか?みんな怯えきってしもうて…」
「ほぅ」
『……』
「子供らにはこの事件のことまだ黙っとります。怖がって学校行かんようになっても困りますし…子供らになんか影響があったら…。変な噂立てられても困ります、事はどうか内密に…」
「もちろん、内緒ごとは我々の得意とするところです。なんせ僕達は、探偵ですからね」
鼓八千はかけていたサングラスを下に少しずらしながら笑顔で言い、泳美もそれと同時に窓の外の景色から顔を離し女将の方に微笑みながら振り返った。
「はぁ…その割にはえろう派手な格好で来ましたね」
鹿の子荘に到着し、鼓八千と泳美は車を降り女将に案内され泊まる部屋へと通された。
狭くもなく広くもない大きさの畳の綺麗な部屋。
縁側があり、庭には花や池もあり落ち着いた雰囲気だ。
キラキラとした綺麗な瞳をより一層キラキラさせた泳美が楽しそうに部屋を見渡しながら荷物を置く。
何せ事務所の住んでいる家は畳の部屋がないため新鮮なのだ。
そんな嬉しそうな泳美を見つめ自然と笑みがこぼれる鼓八千。
旅行ではなく仕事で来ているとは言え泳美と二人で来れて良かったと鼓八千も荷物を置きながら思っていた。
二人で縁側に座り鼓八千は煙草を静かに吹かす。
そんな二人のいる部屋に女将が二人分のお茶と団子を持ちやってきた。
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