【長編】暗殺×首無 戦争コンビの抑止力は、椚ヶ丘の落ちこぼれ side暗殺教室
□暗殺の時間
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3年に上がったばかりであるにも関わらず、月の爆破とその犯人により生まれたE組という名の暗殺教室が始まる、なんとも濃すぎるスタートを切って、早くも数日が経った。
すでに集まっているE組メンバー……あ〜……まぁ、一人だけいないけど、彼以外はすでにいるこのクラスに、微妙な沈黙が流れている。クラスメイト達の今の姿は、普通の教室ではありえない異質さがある。なぜなら、全員が自身の席にいろんな種類の銃を置いており、目元には透明なゴーグルをつけているのだから。
知らない人が入ってきたら、一体何事だと思うだろう。どうして勉強をするための机の上に、拳銃やらライフルなどが置いてあるのかと。だが、残念ながら、このクラスにはそんな指摘をしてくれる教師はいない。なぜならここは、エンドのE組。担任を務める教師以外、近づく事すらしてこない。
まぁ、本校の教師や生徒は、約2名の例外を抜いて大嫌いだから、来なくていいし、顔を合わせなくていいのは楽でいい。
そんな事を思いながら、自身が座る椅子の前を浮かしながら、ゆらゆらと揺れていると、ぺたんぺたんという足音が聞こえてきた。上靴を履いているから、本来ならばこんな足音はしないのだけど、このクラスの担任はかなり特殊なため、この足音も仕方ない。
浮かせていた椅子の足を床に突き、軽くあくびをしながら、年季の入った教室の引き戸へと目を向ける。すると、私が目を向けるタイミングとほぼ同じタイミングで、引き戸がガララッと音を立てて開け放たれた。
そこから入ってくるのは、やけにどでかいアカデミックドレスを身につけている黄色いタコのような生命体。3年の初めに、E組を担当していた新人教師、雪村あぐり先生が一身上の都合で学校を辞めてしまい、入れ替わるようにやってきた、このクラスの新たな教師。
声の高さからして、彼と称するべき年齢である謎の生物は、片手に出席簿を持ったまま、教卓へと足を運ぶ。
「
HR
(
ホームルーム
)
を始めます。日直の人は号令を!」
快活な声で、やってきた担任は、ホームルームの開始を告げ、日直に号令をするように声をかける。
「…き、
起立!!
」
担任の声を聞いた今日の日直、潮田渚が号令をかければ、この場にいる全員が、一斉に立ち上がる。机の上に置いていた拳銃、ライフル銃、ショットガンの銃口を、目の前の担任に向けながら。
もちろん私も銃口は向けている。これが無意味な行動であることは理解しているけど、毎朝の恒例行事として取り入れようと皆で決めたため、一人だけサボるわけにもいかないから。
「
気をつけ!!
」
再びかかる号令を合図に、各々が手元にある銃でいつでも弾丸を撃てるように準備したあと、トリガーへと指をかける。何名かが喉を鳴らす。恒例行事とはいえ、銃を撃つという事に抵抗があるのか、それとも緊張しているのか……あるいはそのどちらもか。まぁ、冷静に考えたらそれが当たり前の反応か。私にはそんな抵抗も緊張も存在していない。多分、身内にぶっ飛んでるメンバーが多いからだろうと予測する。
思案しながらも、狙うのは
標的
(
ターゲット
)
のみ。彼から目を離す事だけは絶対にしない。
各々が緊張やらなんやらに苛まれつつ、担任へと銃口を向ける中、対する担任は、ニヤニヤと余裕かましの笑みを浮かべている。まぁ、当たらないもんね。だって先生は、とんでもないスピードと動体視力を持ち合わせているから。
「
れーーーーーい!!!!
」
渚の最後の言葉を合図に、生徒全員がトリガーを引く。それにより銃の中にあった弾丸が、火薬と共に排出され、教室中に弾丸の嵐が飛び交い始め、かなりの騒音を引き起こす。
「おはようございます。発砲したままで結構ですので、出欠を取ります。蘆屋さん。」
だが、そんな嵐や騒音などものともせず、目の前の担任はなかなか目で追うことができないスピードで弾丸を全て躱し始めた。ついでにいうと、そのままE組の出欠席を取り出す始末である。
相変わらずちょこまかと動くなこの教師……内心で悪態をつきながらも、自身の苗字が呼ばれたため返事をする。
「すいませんが、銃声の中なのでもっと大きな声で。」
……どうやら聞き取りにくかったらしい。その事に溜息を吐きながらも、私はお腹から声を出すように、“はい。”と一言返事を返した。
「磯貝君。」
「
はい!!
」
「岡島君。」
「
はい!!
」
「岡野さん。」
「
はい!!
」
「奥田さん。」
「
はい!!
」
順番に生徒の苗字を読み上げていく担任に、このクラスに通っている生徒全員が大きな声で返事をしていく。弾丸に顔色ひとつ変える事なく。本当、この教師は規格外過ぎると思うのは仕方ないだろう。だって、こんだけ激しい弾幕が張られているというのに、ちっとも当たらないのだから。
まぁ、でも、移動している範囲さえ計算することができれば……。
「にゅやあ!?今の弾丸誰のですか!?かなりギリギリを飛んできたのですが!?」
「…………チッ。」
「ちょっと!?今舌打ちしたの蘆屋さんですよね!?今の貴女のですか!?」
「だとしたらなんです?」
「にゅや!?今度はナイフが!?え!?どっから!?」
「さーてどこでしょうねっと。」
……全部躱された。当たると思ったんだけどなぁ。瞬発力の高さも今度から計算に入れるべきか。じゃなきゃ一杯食わせられないみたいだし。軽い動揺により、躱し方に若干のムラが出ている担任を見ながら、次はどこを狙ってやろうかと画策する。が、結局、思いつく限りの攻撃は、咄嗟の反射神経で躱されてしまった。
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