倉庫(ノマカプとか)

□困った顔が見たかった
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スラムの教会に足を運び、たわいない会話を二、三交わし、神羅に協力を求め断られる。ただそれだけの毎日が彼女とわたしを繋ぐものだった。わたしにとってそれが日常であり、そして彼女もまた、我々の監視下のもと教会とスラムを行き来するのが日常だった。魔晄都市の中だけで完結する世界。
「ねえ、ミッドガルの外、行った事、あるんでしょ?」
土を弄っていた彼女からの突然の問いに一瞬
「ここと大して変わらん」
任務で訪れたジュノンを思い出しそう告げる。遭遇するモンスターの違いや海岸がある事を除けば、神羅の勢力下だと言うことに変わりはない。
「ふーん」
生返事が返ってくる。これは納得していない時の声色。彼女のささやかな願いさえ手折ってきたから分かる。こう言う時の彼女はダメだと言っても勝手に動いて、後始末をつけるのがお決まりだ。
もうすぐすればあの男が来る。そして同じ質問をするのだろう。あの男は何と答えるだろうか。
彼女を鳥籠から連れ出すのはきっと、青い目のソルジャーなのだろう。

***

ハイウェイの先端でミッドガルの外を見つめる。この先は、白紙の世界。
一歩踏み出したら、もう、戻れない。
思わず足が竦み立ち止まる。低い声と共に、彼が振り返った。
「置いてくぞ」
ツンツン頭の元ソルジャー。
ミッドガルの外。1度も出た事のない、外の世界。
「今行く‼」
一度だけ背後を振り返る。
本当は、貴方に連れ出して欲しかった。なんて言ったら、どんな顔、するかな。


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