長編小説

□1-9
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「わっし、サングラスが欲しいんだよねェ」
「サングラス?」

 眼鏡屋に到着し、入店する。中はとても広くて清潔感が溢れる良い店だ。

「わっしの能力眩しくてねェ、使ってて自分でも目が見えなくなっちゃうんだよォ」
「なんじゃその難儀な能力は」

 だからサングラスが欲しいんだよォ、とサングラスコーナーへと直行するボルサリーノに置いて行かれない様に後を着いていく。

「たくさんあるのぉ」
「凄いですね……」
「君たちお店ってものに入ったことある?」

 眼鏡がたくさんあることに感心していたら、ボルサリーノが煽るようなことを言い出してサカズキが怪訝そうな顔をした。眼鏡屋など眼鏡が欲しい人くらいしか入らないだろう。それか、おしゃれ目的や日光対策でサングラスを必要とする人とかか。前世でも今世でも目は有難いことに悪くはないため、自分には今まで無縁だったため新鮮な感じがする。

「わしらを馬鹿にしちょるんか」
「あ、このサングラス良いねェ」

 サカズキが不満を口にしたが、すでにボルサリーノは話を終えてサングラス探しに夢中になっていた。はぁ、とため息をついたサカズキも何かないかと店内を物色し始めたため、アダムも2人から離れてサングラスを見ることにした。

「ふぅん……」

 サングラス、と一口に言ってもその種類は多い。スクエアという角ばった長方形のもの、ウェリントンという逆台形方のフレームのもの、フォックスというキツネの目の形をしたもの。見ているだけで意外に楽しいものだ。
 そうして興味をそそられながら歩いていると、ティアドロップという種類のサングラスの陳列棚があった。

「これ……」

 その棚の真ん中に、ワンピースでボルサリーノがかけていたようなサングラスを見つけた。フレームも金色でそれっぽい。少し拝借してボルサリーノのところへ持っていってみた。

「あの、これとかどうですか」
「んん? おォ〜、良い形だねェ」

 ボルサリーノはそれを手に取るとさっとかけてみてくれた。面長の人にオススメと書かれていたし、若い今でも似合うのではないだろうか。
 ボルサリーノはサングラスをかけたまま近くの鏡まで移動して顔を覗き込んだ。いろいろな角度から見て似合っているか確認しているのか、何故だかこちらが緊張してしまう。

「なんか見つけたんか」

 そこに粗方物色し終わったのか、サカズキが戻ってきた。

「うん、これどう?」
「似合うちょるんじゃないか?」

 わしは流行には疎いけぇ、何とも言えんが、と付け足すも、ボルサリーノは少し驚いたようできょとんとしていた。
 サカズキが素直に褒めるなんて珍しいねェ、とぼそりと呟くと、サカズキはむっとしたのか口を尖らせて拗ねたようだった。

「まぁ、サカズキも似合ってるって言ってくれたし、これにしようかなァ」
「え、もっと見なくていいんですか」

 自分が持ってきたサングラスを持って会計に行こうとするボルサリーノを止める。そんな自分がこんなサングラスかけてたなぁなんて感覚だけで選んだサングラスなんかで良いのか。

「だってこれアダムがわっしに似合うと思って持ってきてくれたんだろォ? それに、似合ってるでしょォ?」

 スチャ、とサングラスをかけてにっと笑うボルサリーノを見て申し訳なさと嬉しさが混じったような顔をしてしまう。
 結局ボルサリーノはこれ以上何か言われる前に、と会計に並んでサングラスを購入してきた。相当気に入ってくれたのか店を出た途端かけるものだから、やはりなぜか恥ずかしくなるアダムだった。
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