長編小説

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 あれから毎日体力作りのためにランニングや筋トレを欠かさずこなした。体の成長を妨げないように筋肉を少しずつつけるようにもした。

 海軍に関する情報を集める中で、14歳から入れる海軍学校なるものがあると知った。

 しかし、海軍学校に入りたいはいいが、いかんせん金がない。そこで特待生入学をするために勉強も頑張った。テストに何が出るか分からなかったため、色々なことを学んだ。世の受験生ってこんなに大変だったんだなぁとひーひー言いながら勉強したのが良い思い出だ。

 そして4年の月日が経った。もう14歳、海軍学校に入るための試験を受けに行く。母親を一人で島に残すのは気が引けたが、自分の頑張りを一番近くで見てくれていた人だからこそ、最後に背中を押してくれた。

「いってらっしゃい」

 絶対に合格して、入学してやる。そう決心して入試に挑んだ。

 そして、見事合格した。しかも、望んでいた特待生。これで4年間の学費は免除される。母さんやりました。

 たはー、と自分の待つ番号の書かれた掲示板を見上げていると、後ろから声が掛けられた。

「お前も特待生か」

 頭上から声が聞こえて思わず振り返ると、そこには背の高いパーカーを着た男性が立っていた。いや、怖すぎないか何その身長……。

「は、はい……」

 ちらり、と番号に目をやる。合ってるよな?
 背の高い男性はしゃがんで自分の目線までくると、ポケットから紙を取り出してきた。

「わしもじゃけぇ」

 その紙を見れば、名前と番号が書かれていた。その紙に書かれていた名前は

「サカズキ……?」
「わしの名前がおかしいか」

 いや、おかしいどころの問題じゃない。サカズキって、赤犬? 海軍大将、元帥になったあの?
 顔を上げてパーカーのフードの中を見れば、不機嫌そうな表情をしたサカズキがそこにはいた。見覚えがある。確かワンピースのなにかで新兵だった頃の顔が描かれていたけど、あれと同じ顔だ。

「い、いえ、知り合いに名前が似ていたので……」

 なぜか怒られている様で身を縮めながら言い訳をする。こんな14歳の子どもにそんな威圧感バリバリで話しかけるなよ……。
 というか、わしもじゃけぇ、ってことは一緒に入学するのか?

「あ〜、わっしの番号こんなところにあったァ」

 顔を引きつらせているとサカズキの後ろから間延びした声が聞こえてきた。かと思えば、いつの間にか自分の隣にひょろりとした男性が立っていた。

「うん、わっしの番号だねェ」

 嬉しそうにうんうんと頷く男性に驚いていると、こちらに気が付いたようで腰を曲げて話しかけてきた。

「おやァ? その紙……君も入学するのォ?」
「は、はい……」

 この間延びした声、下がった目尻。わっし、という一人称。もう名乗られなくても分かる。ボルサリーノだ。

「この掲示板の前にいるってことは君も特待生なんだねェ。小さいのによく頑張ったねェ」

 褒められているのだろうか。はは、と苦笑いを零す。なぜサカズキとボルサリーノに挟まれてるんだ? 何か悪いことしてしまったか?

「わっしはボルサリーノだよォ」
「アダム、です」

 よろしくねェ、と握手をしあう。そして後ろのサカズキにも気が付いたのか、ボルサリーノはにっこり笑ってサカズキにも近づいていった。

「また会ったねェ、よろしく」
「あぁ」

 ふたりとも知り合いなのか、握手はせず何か話し始めた。よろしく、と言われたものの、この二人と一緒にいるのは気が引けたためその場を離れることにした。

「あの、これからよろしくお願いします。では、ぼくはこれで……」

 一旦声をかけて会釈し、くるりと二人に背を向けた。しかし、数歩歩き出したところでガシッと肩を掴まれてしまった。

「どこ行くのォ? 同じ特待生同士、仲良くしようよォ」
「わわ……」

 ずりずりと引きづられてまたさっきと同じ場所に戻される。それを見ていたサカズキは小さくため息を付いている。

「今何歳?」
「じゅ、14です」

 若いねェ、とにんまり笑われてへらと笑う。14歳から入れると聞いて入学したは良いが、周りは18歳超えてるんじゃないかって人たちばかりで、なんだか騙された気分だ。

「わっしは22で、サカズキは19だよォ」
「分からんことがあればすぐに聞け」

 ……漫画とかアニメの知識しかないから先入観で怖がってたけど、意外と良い人たちなのかもしれない。

 こうして、アダムの海軍学校生活が始まったのだった。
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