長編小説

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 あの後よくよく考えてみたが、やはりワンピースの世界に転生をしているようだ。何が原因かは分からないが、前世の記憶とやらを思い出してしまった。

 ワンピースは病院生活を哀れんだ両親が買ってきてくれた初めての漫画だ。めちゃくちゃはまった。外の世界を知らない自分にとって、自由に世界を冒険するルフィたちに毎回心を奪われていた。
 そんな世界に、自分が。

 しかも、ゴール・D・ロジャーの息子として。

 なんて出生だ、と絶望した。しかし、ルージュは生きているし、エースも生まれていない。せっかく自由に動き回れる体で生まれ変わったというのに、ここからお先真っ暗だと悲観することもない。
 まだロジャーはルーキーとして名を馳せて間もないと母親から聞いたし、今のうちに身の安全を確保しなくてはならないな。

 と、いうことで海軍に入隊することにした。

「お母さん」

 海軍に入りたいと母親に告げる。心臓はうるさいくらいになっていて、今にも飛び出そうだ。海賊の息子が海兵になりたいだなんて言い出したら、母親はどう思うだろうか。心は17歳でも、まだ体は子どもなのだ。母親になんて言われるか、怒られるかもしれない、という恐れで震えてしまう。

「良いんじゃないかしら」
「……え、良いの……?」

 ふわりと微笑まれて拍子抜けしてしまう。だって、海兵でしょう? と言う母親に小さく頷いた。

「海軍の人たちは私たちのような戦えない人たちを守ってくれるのよ。あなたは真面目だから、良い海兵になれるわ」

 頭を撫でられてなんだかくすぐったい気持ちになる。そんな考えで良いのか。あなたの旦那は海賊で、その息子が海兵になると言い出したのに。敵同士になるのに。

「あなたが決めたことなら、あの人も反対しないと思うわ」

 あの人、というのはロジャーのことだろう。信頼関係のなせる技だ。まぁ、許可してもらえると言うのであれば、海兵になるための努力は惜しまないつもりだ。で、武勲を上げていればもしロジャーの息子だと後々ばれても殺されたりはしないだろう。……多分。いや、ばれないのが一番だな。
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