長編小説
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南の海、バテリラ。僕はとても、そう、とても平和な島で生まれた。
母親はポートガス・D・ルージュ。父親はゴール・D・ロジャー。
子どもだった自分は父親が海賊だということになんの疑問も抱かなかったし、むしろかっこいいとさえ思っていた。
しかし10歳になった日。それは起きた。
いつも通り浜辺を歩いていたら、急に頭痛に襲われた。立っていられず、その場でしゃがみこむ。頭痛のさなか、頭の中にいろいろな情報が流れ込んできた。何が起きているのか混乱するなか頭痛は次第に激しさを増し、いつの間にか気を失っていた。
目を開けるとベッドに寝かされていた。むくりと起き上がる。ここは自分の部屋だ。意識がはっきりしてくると先程浜辺で頭に流れ込んできた情報が一気に頭の中に広がった。
なんでこんなところにいるんだ?
確か、病院で……と思い出そうとしてまた頭が酷く痛んだ。ずきずきとした痛みを堪え、いまだに混乱する頭の中を整理することにした。
自分は生まれてからずっと病院で過ごしていた。体が弱くてちょっとした運動も出来ないような子どもだった。それで確か外出したいと無理を言って、結局そのまま…自業自得で死んだはず。
なのに、なぜ生きているのか。
しかも、若返って。死んだときは確か17歳。なのに、この体はどう見ても子どものそれ。
手の平をじっと見ていると、部屋に誰かが入ってきた。
「アダム、気が付いた? 体調は?」
母親だ。母親、だよな?
「アダムが浜辺で倒れてたってお隣さんが抱えてきてくれたのよ」
何があったの? と聞いてくるのはポートガス・D・ルージュ。ポートガス、と頭の中で反復して愕然とする。
「大丈夫? 顔色が悪いわよ」
額に手を当てられて熱はないかと心配される。
「熱はないみたいね。今お水持ってくるわ」
部屋から去っていく母親を見送る。
全く理解が追いつかないが、どうやら自分は、ワンピースの世界に転生してしまっている様だ。