リクエスト品置き場

□これで十分
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「食べないんですか?」

 楓は抹茶のパフェを掬いながらそう訊ねた。

「……甘いものは好かん」

 しかしサカズキから返ってきた返答は、楓の食べているものを全否定するものだった。
 辛いものが好き、中でも唐辛子が好きだと聞いた時はなるほど、と納得できたものだ。しかし、自分の好きなものを否定されると何となくむっとしてしまう。
 それにここは甘味処である。店に入ってコーヒーを頼んだだけで、他には何も頼まないというのも失礼な気がしてつい突っかかってしまう。

「こんなに美味しいのに」

 一口だけでも食べません? とダメ押しをしてみたがサカズキは首を横に振るだけで食べてはくれないようだった。
 楓はサカズキに甘いものを食べさせるのは諦め、自分が食べることに専念することにした。サカズキは頭でっかちだ。嫌いなものは嫌いと決め付けて食べてもくれない。そんな人に構っていたらパフェが温くなってしまう。
 季節ごとに毎回違うフルーツを使ったパフェもいいが、抹茶のほろ苦さと生クリームのぐっとくる甘さとあんこのもったりとした甘さの対比が好きで、結局毎回抹茶パフェを頼んでしまう。
 一口含むだけで幸せになれるのに、これが好きじゃないなんてもったいないなぁ、などと思いながら食べることに専念していると、サカズキがふとこちらに手を伸ばしてきた。

「付いちょる」

 そう言って楓の口の端を親指でぐいと拭った。楓から離れた指には生クリームが付いており、いつの間にか付いていたそれを取ってくれたようだった。

「あ、すみません」

 みっともないところを見せてしまった、と思いながら手拭を取った。パフェに夢中になって生クリームをつけるなんて子どもみたいだ、と少し赤面しながら手拭を手渡そうと顔を上げた。しかし、それはすぐに必要なくなってしまった。
 サカズキが親指に付いたその生クリームをべろりと舐め取ったのだ。私の口についていた、それを。

「な……!?」
「ふん……やはり甘いな」

 サカズキはまるでなんでもないことのように息を吐いた。

「だが、たまになら良いもんじゃのぉ」
「そ、うですか」

 楓がそう言い淀むと、サカズキは眉を顰めてどうした、顔が赤いぞ、と自分の手拭で指を拭った。

「そういうところですよ」

 楓は恥ずかしさを振り払うようにパフェを思い切り掬い、口に放り込んだ。













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