短編小説
□目覚めのキス
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「ボルサリーノさん、起きなくて良いんですか?」
ある日の昼。楓が休憩していたところ、恋人であるボルサリーノがやってきて膝枕をしてくれ、と言った。
快く寝かせてあげていたのだが、そろそろ休憩が終わってしまうので起こそうとしたのだが。
「ボルサリーノさん」
「ん〜」
優しくユサユサと肩を揺すってみるも、ぐずって起きてくれない。雰囲気から察するに眠ってはいないようだが、無視を決め込まれて困ってしまう。
「ボルサリーノさん……」
ふと、少し前に仕事が大変だと話していたのを思い出した。大将はやることが多く忙しい。休む時間もなかなか取れないと聞いている。私との時間が少しでも癒しになっていればいいのだが、と楓は悩んだ末にぼそりと呟いた。
「……起きないとキスしますよ」
するとボルサリーノの肩がピクリと揺れた。しかし起きる様子は一向にない。楓はそっと顔をボルサリーノの顔に近づけると、軽くリップ音を鳴らしてキスをした。
「起きないと、もうしてあげませんよ?」
顔を赤くしながらそう言えば、ボルサリーノは目を開き楓を見上げた。すると突然腕を伸ばして楓の後頭部に手を添えて引き寄せ、唇に吸い付いた。
「ん……!?」
楓が驚いて体を離すと、満足そうに笑ったボルサリーノは立ち上がった。
「帰ってきたら、続きねェ?」
ポンポン、と頭を撫でて、ボルサリーノはひらひらと手を振って去っていった。
先ほど強引に奪うようにキスをした楓の唇の柔らかさを思い出し、ボルサリーノはふふ、と自分の唇に触れながら笑ったのだった。