短編小説
□幸せの数
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「1……2……3……」
クロコダイルは膝の上で何かを指折り数えている楓を見下ろした。
「4、5……6……」
その数は一つずつ増えていき、何を数えているのか気になってしまう。こちらから何をしているのか聞くのは癪であるが、楓は色々なことを自己完結してしまうきらいがあるため、こちらから話を振ることにした。
「おい、何してる」
「7……え?」
声をかけると、楓は指を七つ折った状態でこちらを見上げた。
「えっと、クロコダイルさんと会ってからどれだけ幸せにしてもらったのか数えてました!」
楓はニッコリ笑い、再び指折り数え始めた。クロコダイルはその言葉を聞いてグ、と歯を噛み締める。こいつはいつも自覚なしにこちらを煽ってくる。
こちらの気も知らずに、呑気なものだ。
「あ、クロコダイルさんの指も貸してください」
そう言ってクロコダイルの右手をひょい、と取り親指から折り曲げていく。それを見下ろしていると5本とも折り曲げた楓は、クロコダイルを見上げてにっこりと笑った。
「足りなくなっちゃいました」
それを聞いたクロコダイルは眉間にシワを寄せると楓の顔を掴んだ。
「てめぇ、煽ってる自覚はあんのか?」
「んぇ……?」
頬を掴まれて間抜け面をした楓に、ガブリと噛み付くようにキスをした。それでこれから何をされるのか察したのか楓はクロコダイルの膝から降りようとしたが、左腕でがっしりと引き寄せられてしまい、逃げることは叶わなかった。