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□偽りの不倫
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「今日の晩御飯なーに?」

「ゆうりはおうち帰るんやで」

「何でよ!たまにはいいじゃん!」

「たまには?昨日も今日もここにいましたよね?」

「何、そんなに帰ってほしいんですかーー」

「そうやなくて!バレるでそろそろ」

「はいはい、また明日」



チュッ



『ただいま〜 おっ!ゆうりちゃん!』

「こんばんは、お邪魔してました」


さやかちゃんの旦那さん。


『そっかそっか今日はもう帰っちゃうんやな!
またおいでなー!』

「はい、お邪魔しました」



私の愛する人は隣の家の奥さん。
出会ったのは1年前。私が高3でさやかちゃんが24歳、新妻。

隣の空き地に家を建てて越してきた。


越してきた時、私は就職試験に追われていて親から隣人さんが出来ると聞いたくらいだった。
私の家は山の上にあって近所といってもまあまあな距離がある。わざわざそんな近くに建てなくてもと思うくらいだった。



私は、設計をしたり株のトレードをしたり、家で出来る理想の職についた。


だからさやかちゃんには毎日会える。



私は中学生時代からカメラが好きで近所の何気ないものでも撮りによく散歩をしている。


就職試験が終わり、息抜きに散歩に行こうとした時さやかちゃんに会ったのが始まり。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「ゆうりちゃん、、?」

「あっ、はい。こんにちは」

「こんにちは!初めましてやんな!
隣に引っ越してきた山本です。よろしくな!」


玄関から出てきたさやかちゃんに遭遇した



「よろしくお願いします。な、なまえなんて言うんですか、、?」

「名前、、?」

「あっ、いや、旦那さんもいらっしゃるからどっちも山本さんって呼んだらどっちの事かわからないっていうか、あの〜その〜」

「さやか!」



今思えばただの変態が聞くことだ。。




「さやか、、さん」

「うん!さやかでも何でも呼んでな!」

「はい。。」

「ゆうりちゃんカメラ好きなん?」

「はい、ただの自己満ですけど」

「私も着いていっていいー?この辺のこと全然わからへんし!」

「あ、どうぞ」

何を話していいかわからなくて緊張でガチガチだった私。

「へぇー!こんな景色いいんやな!」

「私の一番のお気に入りの場所です」

「、、、、」

気がつくとさやかちゃんが私の顔をじーっと見ていた

「あの、何かついてますか?」

「横顔綺麗やな〜って思って」

「いや、全然です」

「ゆうりちゃん顔赤いで、照れた?」


返事をする間もなくその場に倒れてしまった。

原因は過労。


目を開けるとそこは見たことない天井で、さっきまで隣にいた人の声が聞こえる。


「ゆうりちゃん、、?大丈夫?」

「あっ、ごめんなさい。すぐ帰ります。」


看病してくれていた事には間違いなさそうで迷惑かけたなーと反省した。

「まだ起きたらあかん!すごい熱やで!
試験の疲れがきたんやろ、ゆっくり休み」


さやかちゃんが頭を撫でてその場を離れようとした時、私は何を思ったのか変なことを言った。

「あの、さやかさん。」

「ん、どしたん?」

「さっきの照れました」

「えっ、ほんまに?」

私はハッっと正気に戻り焦りだした、遅いけど。

「あっ、いやっ、えっと〜」

「まぁええわ、とりあえず寝とき!」

ニコッて笑うあなたは可愛かった



1、2時間休ませてもらい、熱が下がった。

「すいません、お邪魔しました」

「体大事にするんやで!また散歩行こうな!」

「はい」




数日後また散歩に行こうと外に出た時。

「ゆうりちゃん!おはよ!」

ベランダからさやかちゃんが呼んでいた。

「おはようございます」

「おいで!!」

さやかちゃんが手招きをして家に呼んでくれた



「お邪魔しまーす。」

「ガトーショコラ焼いたんやけど食べへん?」

「食べます!!」

「好きなん?ガトーショコラ」

「大好きです!」


夢中になって食べていたけど、なぜか頭の中は頬杖ついて私を見るさやかちゃんでいっぱいだった。

「ごちそうさまでした」

「はーい。あ、ゆうりちゃん今から時間あるー?」

「ありますよ?」

「ちょっとお話しようや!ゆうりちゃんの事知りたいし!」

「ただの人間です。。」

「ハハっ!ゆうりちゃん面白いよな!!」

「えっ、」

「好きやで!ゆうりちゃんみたいな子!」

さやかちゃんはよく笑う。可愛い笑顔に私も思わず笑顔になる。

「あ!笑った!!」

「、、、」

「私あんまり旦那と話し合わんくてさ、久しぶりに人と話して楽しいって思ったわ」

「私なんかでよかったらいつでもどうぞ」

「ほんまに!?」

「はい。 あっ、あれって」

私が見つけたのは好きなアニメの登場人物のキーホルダーだった。

「あれ知ってんの!?私アニメとか大好きやねん!」

「私も好きです!!」


そこから意気投合して夜近くまで語ってしまった。

『ただいま』

「あ、おかえりなさい、、」

『あれ、お客さんか?可愛い子やな〜』


そこに帰ってきた旦那。飲み会終わりでベロベロに酔っていた。

その時私は嫌な予感がした。

さやかちゃんが震えていた。

私は見ず知らずの人を寝室に運び、さやかちゃんの元へ行った。



「大丈夫ですか、、?」

「あっ、ごめんな。今日は遅いからもう帰り」

「震えてる。」

「なんでやろな、すぐなおるやろ!」


ひどい作り笑いでこの場を振り切ろうとする


「暴力。ですか?」

「えっ、いやそんなんじゃっ!」


私は思わず抱きしめてしまった。
出会って数日。人を抱きしめるなんてしたこともなかった私の腕の中には震えるさやかちゃんがいた。

「私が守ります。」

深くも知らず、なんの根拠もなかったけど、何かを確信した。


「ありがとう」



さやかちゃんの袖をまくると、痣がいっぱいあった。


話を聞くと前々から酔った時の暴力がひどく、旦那は次の日には忘れてるんだとか。
でもお酒を辞めさせようとしてもイライラして同じ目にあうらしい。

私はその日朝方、旦那が起きる時間までさやかちゃんに寄り添った。


「また後で来ます。」

「ごめんな」


私は家で旦那が家を出るのを見計らってもう一度さやかちゃんの家に行った。

ドアの鍵は空いていた

ガチャ



「さやか、、さん?」


ドアを開けた瞬間、さやかちゃんは泣きながら抱きついてきた。


私はなんの躊躇もなく抱きしめ返した。

さやかちゃんの体は小さく細い。
私の中にはおさまってしまう。

リビングに移動してソファーに座ってからも、さやかちゃんは私の膝の上に乗り、泣いていた。


こんなに愛おしい人、なんで殴るの。。

私の頭の中は暴力を振るう旦那と、さやかちゃんの愛おしさで他のことは考えられなかった。


泣き止んださやかちゃんは、「ごめん」と「ありがとう」をひたすら繰り返していた。


もうこんな姿見たくない。
そう思った私はさやかちゃんの唇を塞いだ。


「んっ、うっ、、」

さやかちゃんは力いっぱい私を押した。

「はぁっ、はぁっ、ゆうりちゃん苦しい」

「暴力と、キス。どっちが苦しいですか?」

「何言ってんの?どうしたん?」

さやかちゃんが悲しい気持ちになるのはもう嫌だ。

「さやかさんが悲しむところ、見たくない。
昨日言いました。私が守るって。」

「でもどうやっ、、」

私はまたさやかちゃんの唇を塞いだ。
自分が何をしたいのかもわからなかった。
か細いさやかちゃんをソファーに倒す。
さやかちゃんはもう反抗しなかった。
そもそもキスをした時も嫌がっていなかった。


チュッチュッ

部屋中に響く音。



私は体中にある痣の傷を消毒するように、上から跡をつけた。



私は少しでも近くでさやかちゃんを守りたくて、この日は夜ご飯を食べさせてもらうことにした。


私がいる時の旦那は普通に優しく見えて、とてもじゃないけど暴力を振るうようには見えなかった。それが怖い。


「ちょっと洗濯物畳んでくるわ」


さやかちゃんが2階に行ってからだった。

『なぁゆうりちゃん、彼氏とかいるん』

旦那の手は私の太ももにあった。

「いないです」

『じゃあ発散する相手もおらんやろ』



この変態じじいが、と思いながらもこれはさやかちゃんを守るチャンスかもしれないと思った。


「私とヤリたいんですか?」

『してくれるん?』

「条件つきますけど』

『何や、金ならあるで?』


違う、お金なんていらない。
さやかちゃんを守りたくて。


「お酒やめてください。臭いの嫌なんで」

『それくらいするわ』


そう言うとすぐに倒してきた。
キスしようとするのを一旦止めて、

「約束破ったらさやかさんに言いますよ?」

『わかった』



荒い。気持ち悪い。
でもさやかちゃんを守るため。そう思って耐えた。


さやかちゃんが2階に行ったらなかなか戻ってこない事をいいことに。。悪いヤツ。

さやかちゃんが降りてきた時には何事もなかったように。


「お邪魔しました」

「またおいでな」
『いつでも来るんやで』


それぞれが違った意味で同じ言葉を言ってくる。



私はその晩考え続けた。






次の日もまたさやかちゃんの家に行く

「昨日はありがとうな」

「いえ、急にすみませんでした、、」


さやかちゃんは私が旦那と体の関係を持ったことは知らない。知られない。


「ゆうりちゃん、敬語やめて」

「あぁ、はい。あっ」

「まぁ慣れていこ!」


距離が近づいていることは嬉しかった。


「あと、さやかさんもやめよ?」

「じゃあなんて」

「さやかか、さやかちゃんがいいなー」

「わかった」

「うん!」



アニメの話をしたり、料理の話をしたり。
他愛もない話が楽しかった。幸せだった。



昼になって、2人とも眠くなる。


さやかちゃんはいつの間にか私の肩に寄りかかって寝ていた。

寝顔が可愛すぎて、私はずーっと眺めていた。



寝ていたはずのさやかちゃん。

「ゆうりちゃん寝えへんの?」

「だって、可愛いからっ」

私はもう我慢できなかった。



長くて熱いキスをした。

さやかちゃんの背中に手を回し、薄いTシャツの中に手を入れて、ホックを外した。


「ゆうりちゃんしたことあるん?」

「ないよ」

「にしては手慣れてんな〜」

「うるさい」



その時の私に理性なんてなかった



「んっ!あぁっ、、ゆう、りちゃん、、」

「気持ちいいの?」

「うんっ、、」

「さやかちゃん」

「なに、、?」

「すき」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

そこから私は日中はさやかちゃんの家で過ごし、夜に仕事をするようになった。


今だってたまに旦那との関係は続いている。
さやかちゃんに触れられたくなかったから。

さやかちゃんが、「最近あの人何もしない」と嬉しそうに言ってきたとき、私は間違ったことはしていないと確信した。


たまにあるその苦痛を乗り越えれば、昼間は毎日さやかちゃんといれる。


いつしか私の中でのさやかちゃんは
守りたい人から愛する人に変わっていて、必要不可欠な存在だった。


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