運命の女
□時を越えて
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昔次元はアレックスという10歳の少年と知り合いだった。
もう15年も前の話だ。
絵に描いたような独裁国家である某国で堪えかねた陸軍がクーデターを起こした時分であった。
次元はその陸軍に銃の腕前を買われ雇われていた。
アレックスはその時に出会った陸軍の弟でその兄アダムは上官であり戦友でもあった。
兄弟は外国人である次元を歓迎し、1番親しく付き合っていた。
弟の方は特に懐き、いつも銃の撃ち方の指導をねだっていた。
兄は愛国心の強い戦士でカリスマ性も備える男で
そんな彼に兵士たちは憧れ、また国民も国のために命を懸ける姿を誇りに思い英雄視した。
しかし最初こそは陸軍の優勢であったものの次第に暗雲が立ち込め、そのうち形勢は逆転された。
皆の期待に応えようと奮闘すればするほど状況は不利になり、やがてアダムは心を病んでしまった。
残党と成り果てた同志と過ごしていた月のないある夜だった。
アダムが狂ったように共に戦った同志たちに発砲し、屠っていく。
次元は肩に掠めただけで済み、狙いを定めて狂人と化したアダムの頭部に銃弾を喰らわせた。
あれ以来アレックスと会うこともなく次元はその場を後にし15年の月日が経った。