運命の女
□凶兆
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ボディーガードを始めて3日が経つ。
その間は例の気味の悪い手紙が届くぐらいで次元は今日、名前がゲストとして呼ばれた高層ビル最上階でのイベントに付き添っていた。
『次元さん、お待たせしました』
「おぅ」
ビルを出てすぐの路肩に車を停車して彼女を待っていたので早く出発できた。
その時だった。
爆音が響き、嫌な煙を上げ、細かい窓ガラスの破片が上から散らばってきた。
「なんだぁ!?」
『きゃっ…!』
それが先ほどまでいた高層ビルの最上階からだと気付いた。
悲鳴と何とか逃げ出そうとする人々の群れで現場はパニックになった。
あと少し出発が遅れていたら自分達が巻き込まれてたのかもしれない。
その夜ニュースでは例の爆破事件で持ちきりだった。
当然だ、NYのど真ん中でやられたのだから。
「警察によりますと、犯行は反社会組織のテロ活動と見て捜査を進めて…」
途中でテレビの電源を切る。
『あの…次元さんお夕飯できました』
「メニューは?」
『ボロネーゼとサラダとカボチャスープです、お口に合えば良いんですが』
「すまねぇなぁ、有名人にこんなことさせちまって」
『そんな、有名人だなんて…お世話になるのですからせめてこれ位は』
久々の他人の手作り料理に舌鼓を打ち、名前はそんな次元を満足そうに眺める。
『美味しいですか?次元さん』
「あぁ絶品だな、嫁に欲しいくらいだ…って言ったらセクハラになるか?」
冗談ぽく感想を言い、名前の反応を見ようと目線をあわせると顔を真っ赤にして硬直していた。
何か不味いことを言ったのだろうか、しばらく沈黙が続く。
『き、今日の爆破事件…!』
「お、おぅ」
『あれはホントに私が原因だったんでしょうか…』
「…」
そう、今日彼女が次元のアパートに泊めて貰っているのは他でもない例のストーカーが原因であった。
爆破事件の後名前を家に見送り、いつものように郵便ポストを次元が確認したところ手紙は確かにあった。
しかし内容がいつもと違っていたのだ。
「君が僕を見てくれないから爆破事件が起きたんだ」
今まで保管していた手紙を持ち、警察には届け出たが犯人も馬鹿じゃない。怪文書であることと指紋も一切出なかったため進展はなかった。
身の危険を感じた名前に次元がストーカーの件が解決するまで自身のアパートにしばらく身を寄せないか持ち出したのだ。