運命の女

□マネージャー
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『本当に来てくれたんですね。』

「まぁ約束しちまったからな。」

次元が用意した車に名前が乗り込む。

『マネージャーには朝一で次元さんの事話しました。』

「びっくりしただろ?」

『それはもう。』

昨夜あんなに怯えた表情とは打って変わって鈴を転がすような声で笑っていた。

『それだったら自分が用意してたのにって言われちゃって。でも信頼できる人だからて伝えたら渋々OKしてくれたんです。』

「嬢ちゃん、そう簡単に人を信じちゃあダメだぜ。特に俺みたいな男はな。」

『次元さんだけ信用してるので大丈夫です、あとマネージャーも。』

「そのマネージャーってのには俺が1ヶ月ボディーガードする話しはしたのか?」

何を聞いてるんだろ、そう言いたげな表情で『いいえ。』と彼女は応えた。

「マネージャーには1ヶ月だの期限の話は止した方が良いな、どこからストーカーにそんな情報が出るかわかったもんじゃねぇ。
1ヶ月身を潜めて俺が辞めたのをわかった途端、牙を剥くかもしれねぇしな。」

『確かに…次元さんの言う通りですね。』

上手く言えないがさっきから妙な感じがする。そう次元は思った。

それは次元がこれまで身近になった女たちの中で名前は新しいタイプの女だからだ。

今まで付き合ってきたタイプは俗に言う「顔立ちが良いバカな女たち」だった。お互い楽しければそれで良い。後腐れがない楽な関係ばかりだったからだ。

それに比べて名前は見た目が不二子のような色っぽい見た目こそしてるが性格は純真そのものと感じた。

勿論真剣に向き合い、愛し合った女もいた。だが自身が闇社会で身を置く以上、人並みの幸せなど願ってはいけないのだ。

確かに年を重ねる毎に独り身の寂しさは増していくが結婚などまるきり向いてない。

子供が生まれたらベランダか換気扇を回してじゃないとタバコは吸えない。

そして嫁は母親になる。仕方の無いことだがその生活に最早愛などあるのだろうか。

そう考えると自身の結婚に希望など持てるはずもない。

『…さん?次元さん?』

「おっと、すまねぇ考え事を…。」

『そうでしたか、あっそこを左に曲がったらすぐです。』
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