運命の女

□ボディーガード
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早朝、すっかり酔いも覚めた次元は気だるそうに頭を掻きむしりながら起き上がった。

スースーと小さな寝息のする方に目を遣ると名前が椅子に座っていたが上体は次元の使ってるベッドにうつ伏せになっていた。

ずっと傍で看てくれて疲れ果てたのだろう。

ふと次元はベッドに波打つ彼女の髪をソッと撫でた。

『ん…。』

「ひっ…!」

起こしたかと思い、慌てて髪に触れた手を引っ込める。

『あ、私寝ちゃってました?』

「みてぇだな。」

悪かった。

それだけ言って次元はアジトへと帰ろうとベッドから出た。

名前は次元を見送ろうと玄関まで付き添った。

「悪いな、嬢ちゃん。おじさんとはいえ、男を家に入れるようなことになっちまって。」

『いいえ、当たり前のことをしたまでですから。』

「そうは言っても世の中悪い男だらけだ、こんな事最初で最後にしな。」

『あら、でも貴方は何もしてこなかったわ。』

「…なぁ何処かで会わなかったか。」

『今度はお誘い?』

「そんなんじゃねぇ!…世話になったな。」

そう言って足早にアジトへと帰って行った。




「いーな!いーな!次元ちゃんー!俺も街中に倒れりゃどっかの美女が拾ってくんないかなー!」

朝帰りの次元に何処かの女とワンナイトラブしてきたとそう思い込んだルパンは昨晩の話を一通り聞いたあとそう喚いた。

「お前さんにゃ無理だな。」

「うむ、下心が丸出しだからな。」

そう冷たく言い放す次元と五ェ門をよそに、ルパンは次元の昨晩の出来事に心底羨ましがっていた。

「それにしても何もなかったって本当なのかよ、男と女が1つ屋根の下で一晩過ごしたってのによぉ。」

「そんな事言われたって無いものは無い、大体下手したら親子ほど年が離れてるんだぞ
そんなおじさん相手に若い娘さんが好き好んで相手するかよ。」

「やっぱそんなもんかねー…で、どんな女だった?」

「どうって…別に普通だな、綺麗で若いのに妙に艶かしいただの嬢ちゃんだったよ。」

「普通ねぇ…なぁ、名前聞いたのかよ?」

「あぁ、名前だったっけな…。」

そう教えるとルパンは楽しそうに口笛を吹いた。

「それがどうかしたか。」

「次元ちゃんたらなーんにも知らないんだぁ〜。
名前て言ったら今をときめく歌手じゃないか、最近CMに出てたりして街中彼女のポスターだらけじゃないの。」

なるほど、それだと確かに自分はどこかの街で彼女のポスターを見たのだろう。

それだったら会ったことがあると勘違いもする。

「惚れたか?」

「まさか、美女に弱い五ェ門じゃあるまいし惚れたとしても俺達みたいな奴等が人並みに女と一生を共に出来ると思うか?」

「ちげぇねぇ。」

そう、それに惚れたとしてももう会うことはないだろう。

彼女の部屋は知ってるが会いに行くつもりはないし、偶然街中で再会などそうそうあったもんじゃないだろう。

結果から言うと会ったのだ。
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