黒炎の章
□心を盗む義賊たち(男性編)
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メメントスで話した自分が前にいた世界のことを話すと、竜司と杏が同情してくれたことが嬉しかった。
三人と一匹の会話を聞きながら、蓮が気になり、彼を凝視すると、ソティスの力で、時が進んだ気した。
〜某の節(某月)某日〜
見えた先には、頭を抱えている怪我だらけの蓮がいた。
顔はあざだらけで、腕には手錠の痕跡、さらに注射のような痕跡がちらほらあり、そして着ている制服には傷だらけで痛んていた。
その姿は、前の世界にいた、過去に自分が担当していた、青獅子の学級にいた未来の級長のように顔は青白く暗くなっていた。
場所は牢獄のように暗い地下室であることを、理解した。
周りを見てみると、警備員のような女性が蓮に尋問している風景、そして、この時間は蓮は捕まってしまった時間だと推測できる。
―――これは未来の蓮?
そう思った自分は言うこともできず、ただ、蓮を見守るしかなかった。
しかし、自分の姿は、蓮と女性には見えていないのか、気づかれていないようだ。
捕まられた怪我だらけの蓮は頭に抑えていた手を前に添えると、女性は腕を組み話す。
「君が先生と呼んだその存在がいたようね。その人は君が心の怪盗団のリーダーと知りながら、自分のやることを導いてもらった。だからここまで来れたということ……違う!?」
「……わからない……」
女性の尋問により、怪我だらけの蓮は頭を抑えつつ声を振り絞りながら否定するように話す。
〜〜
時は戻り、その暗い牢獄のような地下室から夕焼けの渋谷駅に戻った瞬間、頭に何か衝撃に襲われた。
「っ!?」
遠い未来にいる怪我だらけの彼のように頭を抱えた。
どうやらソティスの力で、過去だけじゃなく未来を見た気がした。
あの女性は尋問している蓮を心の怪盗団のリーダーと言った。
それが彼に関係があるのか、わからなかった。
「どうしたのじゃ、お主。顔色が良くないようじゃが」
―――未来が見えた。
ソティスに気づかれると押さえていた手を離し、今あったことを話す。
「なぬ!?それはまことか!?どのようなものじゃった?」
―――蓮が尋問されていた。
そう話すと驚いていたソティスはううむと考え込む。
自分も考え込むと先ほどの風景が忘れられず、頭を再度手で押さえた。
「先生、顔色が悪いようですけど、大丈夫ですか?」
蓮に声かけられたことに気づかなかった。
―――大丈夫。
「先生、ソティス、未来が見えたって本当ですか?」
「お主、わしのことが見えるのか?」
ソティスは頭を押さえている自分を後に、蓮と話していた。
「レン、ソティス殿が見えるのか?ワガハイはみえないぞ?って先生!?大丈夫なのかー!?」
モルガナはハテナを浮かべているとこちらに気づいたようで蓮のカバンから降りてポンポンと叩いてきた。
「そうみたいだな……」
蓮は苦笑いしてから、息を整えて、真剣な表情で自分に聞いてきた。
「先生、ソティス。俺は先生とソティスが未来で見えたこと、そして、先生達のことをもっと知りたいんです。時間があったらでいいので、話してもらえませんか?」
蓮はソティスに向かって話している。
「ううむ……のう、べレト/ベレス。頭を抑えているようじゃったが…」
―――大丈夫
「わかった。べレト/ベレスが落ち着いたときに連絡でもすればいいのじゃな?」
「そうしてもらえると助かります」
「のう、べレト/ベレス、それでよいじゃな?」
―――構わない
「ありがとうございます。ではまた連絡しますね。もちろん、時間があったら先生から連絡頂いても大丈夫ですので。」
蓮は礼をするように頭を下げて地下鉄に走っていくのを見送った。
「……レンはわしらの世界に興味津々じゃな」
そうみだいだ。
自分はうなずき、ソティスと共に自分の家に帰っていくことにした。
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