黒炎の章
□プロローグ
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………………。
「きよ……」
誰かの声がどこからか聞こえる。
けど……すごい眠い。
「ねむい……」
「このっ、大馬鹿者!!お主、分かっておらぬようだな」
その声が大きくなると跳ね起きて、そのまま緑髪の三つ編みをした少女に怒られてしまう。
「……?」
「なーに寝ぼけておるんじゃ。ここはお主がいる世界ではないのじゃ」
「!?」
驚いてしまった。自分がいる世界ではない?
「このわしにもはっきりと分からぬのだ……お主、自分の名、姿は覚えておるか?」
自分の姿は覚えていることを少女に伝える。
「ふむ、姿は覚えているようじゃな。名は覚えておるか?」
―――べレト/ベレス。
「うむ、べレト/ベレスか。名は覚えておるな。自分の正体は覚えておるか?」
思い出そうとするが思い出せない。
「思い出せぬか…………。どうにもならぬな……お主には話さなければならぬことがある。」
話さなければならない事?
少女はうむと頷き、続きを話す。
「お主が目覚めるまでこの世界を軽く調べとった。
それはお主のいた世界と同じく破滅へ進みゆく世界なのじゃ。運命に囚われたとある人間が亡くなろうとしておる。
そいつがもし亡くなるとどうなると思う?
そうなれば……お主がいた世界のように……全ての人間が苦しみ合い、憎しみあう。
全ての人間が牢獄の中に囚われ続ける運命になるのじゃ。」
自分のいた世界と同じく破滅へ進みゆく世界。
それはもしかして……戦争なのだろうか?
「お主は戦争だと思っておるな?違う。戦争ではない。わしには分かるのじゃ。」
戦争ではないなら何だろうか。
「…………それはお主が直で見ると良い。意識を取り戻した時にはさぞ驚くかもしれぬ。」
少女はそう言う。
目を覚めたらそこには見慣れない雰囲気が漂っていた。
そして、少女がいう、運命に囚われた人間に出会うことで世界の運命が変わろうとしていた―――
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