ソニック

□使命という名の鎖
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―あなたの心は自由

―あなたの心はあなたのもの

―あなたの心を縛ることなんて許されないのだから


「………!…」

声が、聞こえた。
知っているようで、でも誰だかはわからない声。


「…ストレスから来る幻聴、か?」

ハハっと微笑する。

マスターエメラルドの守護は、これといってやることがない。


エメラルドを狙う者がいれば、それを制し、守護することが自分に課せられた使命である。


しかし、ただこのエンジェルアイランドのマスターエメラルドの前で毎日を過ごすのは、なかなか精神的に疲れる。

(こんなんなら、エッグマンでもなんでもいいから騒ぎを起こしてくれた方が暇潰しになるな…)


そんなことを考えながら、祭壇の前に寝転ぶ。


知らぬ間に、深い眠りの中に陥っていた。




また、声が聞こえた。しかしこれは幻聴ではない。

近くからしっかり聞こえる。


祭壇の、上。
誰かが、マスターエメラルドの前にいる。


(誰だ?)


「混沌は力。力は心によりて力なり」


この声。
今間近で聞いて、やっと思い出した。これは……


「ティカル、か?」


さりげなく、しかし伝えたい言葉をはっきりとはきだした。

ティカル、と呼ばれた少女は、マスターエメラルドに向けていた視線を、こちらにゆっくり向ける。



「久しぶりね」


なぜ、彼女がここに。
また、マスターエメラルドによって、過去を見せられているのだろうか。


彼女は、先代のマスターエメラルドの守護者。いわばナックルズの先祖に当たる。


「お前…なんでここに…「ねぇナックルズ」


言葉を遮られる。


「あなた、今の生き方、どう思ってるの?」


今の生き方?


「満足してる?」


質問の意図が、よくわからない。

「あぁ?俺は今の生活に満足してるぜ?なんてたって、マスターエメラルドの守護は、誇り高いことだと思ってるしな」


とりあえずそれなりの答えを返す。

それに、マスターエメラルドの守護には、本当に誇りを持っている。


「えぇ。それはわかっているんだけど……」


私が気になっているのは、と付け足す。

「…あなたが今、“楽しい”か、よ」

「あなたは、マスターエメラルドの守護という使命に、縛られている」

「あなたの心は、“使命”によって、とらわれてしまっている」


特にあなたは、使命感というか、責任感が強いからね、と苦笑い。


「それに…疲労困憊、て顔してるし。疲れてるでしょ?」


バシバシいろいろと指摘されて、ポカンとするナックルズ。



「あ、ごめんなさいね。いろいろと……とにかく!あなたには休憩が必要よってこと」

「……いや、俺は別に…」
「いいから!使命使命って、疲れちゃうわ!気分転換しなきゃ、頭がパンクしちゃう」


なかなか強気な発言をするようになったな、と微かに思うナックルズ。


だが自分は……


「んじゃあ、俺が気分転換ってのをしてる間、誰がマスターエメラルドを守るんだよ」


マスターエメラルドは、とてつもない力を秘めている。悪人に狙われたら、大変なことになるのは目に見えている。

(まぁ何度か狙われたけどな……カオスにはぶっこわされたしな)



「…大丈夫よ」

ティカルはにこりとナックルズに笑いかける。


「あたしが、見守っているから」


「だからあなたは」


「自分のやりたいことをやればいい」


心の底から、楽しいと思えることを


「それを否定する権利は誰にもないし、あたしはそれを見守っている…あなたの先祖として」


「あたしは、父さんを、みんなを止められなかった…そのせいでカオスも復活してしまったわ……」


ティカルの口調が、暗くなる。自分に言い聞かせるように。


「あんなこと、二度と起きて欲しくない。だからこそ、あなたには自由に生きてもらいたいの」



もう一度言うわ、使命なんかにとらわれないで。


ティカルの瞳は真剣だった。瞳の奥にある光が、ナックルズの瞳を射ぬく。


「それに、あなたには信頼できる仲間がいるじゃない。たまには会ってみたいでしょ?」

「………まあな……」


「だったら決まり!マスターエメラルドのことは一度忘れて、今を楽しんできて…あたしとの、約束よ」



狭いエンジェルアイランドから、外の、広い広い世界に飛び出して!


その言葉を最後に、ナックルズの意識はふっと途絶えた。





「んぁ……」

目が覚めると、いつもの光景。


「寝ちまってたのか、俺」

辺りを見回すが、ティカルはいない。やはり、マスターエメラルドによって見せられた、夢だったのか。



ふと、空を見上げた。綺麗な青が広がっている。

何故か、ウズウズした。
そういえば長い間、仲間と顔を合わせていない。


彼らは元気だろうか。


そう考えていると、自然に走りだしていた。青空に向かって、力強く。


「ティカル!マスターエメラルドをちょいと見守っててくれ!!」


誰もいないはずの景色に、そう言い残して。





―あなたの心は、あなたが決める

―使命にとらわれていたら、あなたはあなたではなくなってしまう

―あなたは笑顔でいるべき
―笑って、楽しんで。今を過ごせば、おのずと未来も開けていくから



「光はあなたの心の中に」





あとがき

やってしまいました…
いや、ナコティカをかきたかっただけなんです…

ソニックアドベンチャークリアしてないのに…ティカルかいてしまってもう……
でもティカル大好きです!うふふ(^-^)

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