ソニック

□かなづちだけどさ
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海。

蒼い風景が地平線の彼方まで色を染め、太陽の光に反射して、なんとも言えない、すかすがしい気持ちになれる場所。



「あ〜気持ちいいわ〜…」「俺は気持ち悪ぃ…」

「うわ〜!綺麗だな〜!」「……残念だが少なくとも僕は海と山では山派だ」

……………。

「あんたら二人は空気読みなさいよ!!せっかく海に来たのに!!」


エミーの叫びがビーチに響く。
今日は、エミーとテイルスの案で、海に来ている。


シルバーは素直に海の美しさやら雄大さに心をうたれたようだが、ソニックとシャドウはげんなりしている。

理由は簡単。二人共、かなづちだからだ。

特にソニックはクリスの家のプールで死にかけたこともあり、尚更で。


「意外だよな〜アンタら。足速いのにかなづちなんてさ!」

シルバーがソニックとシャドウに話しかける。

直後、ギロリと恐ろしい視線が突き刺さった。


(…こいつらにかなづちの話題はNGだ。殺される…)
本能でそれを察知したシルバーは二匹と目を合わせないことにした。


…そんなこんなで、シャドウとソニックは浜辺に寝転び、エミーやシルバー達は海できゃあきゃあ楽しそうな声をあげている。


「……あっちぃ………」
「同感だ」

ジリジリ照りつける太陽。海にいる者はともかく、浜辺はもろに日光が当たる。

「焼き鳥ならぬ焼き針鼠になりそうだぜ………」

「(まずそうだな…)」

ソニックの言葉を、シャドウは密かに頭の中で返す。こう暑いと、しゃべる気にもならない。

「………」
「………」

二匹の視線は楽しそうに戯れる、シルバー達。

するとシルバーがこちらの視線に気づいたのか、手を振り返してきた(満面の笑みで)。

多分、シルバーのことだ。二匹が泳げないことは別に、皮肉とかではなく純粋な笑顔なんだろうが。


「…おいシャドウ…」
「………何だ……」
「シルバー沈めようぜ」
「了解した」

瞬時に二人の意見は一致した。いつもは大抵意見がバラバラな二匹なのに、だ。

シルバーの満面の、純粋な笑みが、逆にかなづち二匹の目付きを変えた。危ない意味で。


「なんと運がいいことに、カオスエメラルドがあるんだな〜」
「………7つともか?」
「Yes!」


スーパー化すれば、宙に浮ける。すなわち…

二匹は怪しく危ない笑みを浮かべて、カオスエメラルドに手をかざした。


「……あの二人なにやってんだ?」

なにやら怪しいソニック達に疑問の目を向けるシルバー。


「おーいアンタら!何やって……「沈めシルバー」
「はい?!」

声を掛けた直後には目の前の色は金色だった。

「あ、ちょ!!がぼっ…!おい!!沈む沈む!殴るな押すな蹴るな…あばぶっ」「♪」
「(沈め沈んでしまえシルバー……!!)」


二匹にいいようにフルぼっこにされる哀れなシルバーは、見事に沈んでいきました。


「がぼぼぼ………」


「さらばシルバー永遠なり…」
「……達者でな……」


見事なまでに作戦が成功した金色二匹。これだけのためにスーパー化なんて、なんともおとなげないことでしょう。


「あーんーたーらー…」

一つ目的を終えて喜んでいる二匹の背後から、世にもおぞましい低い声が響いた。

案の定それは桃色の針鼠が発した声。


「は、Hi,エミー……(まずい殺される…)」
「…(今から逃げれば間に合うか……?いや、逃げたらますますひどいことになりそうだな…)」


わなわなと肩をいからせ、黒いオーラをただよわさせている。

まさに形成逆転。

彼女はおもむろに凶器(と書いてハンマーと読む)を取り出して、振りかぶった。


「地獄で反省してこい!!」


凶器が風をきる音が轟いた。


「シルバー大丈夫?」
「あ、ああ。もう平気だ」
あの後テイルスによって救助されたシルバー。

その横には、なんともまあ大きなコブが出来た針鼠二匹が体育座りをして虚ろな目で遠くを見ていた。


(…凶器で殴られるよりは俺の方がマシか……)

シルバーがしみじみと二匹の痛そうなコブを見る。
自分も死にかけたが、今の二匹の目の方が死んでいる。

「まったく…かなづちだから腹いせにシルバーを沈むるなんて…馬鹿針鼠!」 「まあまあ…(これ以上叩いたら二人とも本当に死んじゃうよ…)」

再度ハンマー(と書いて凶器とも読む)を取り出そうとしたエミーをテイルスが止める。

「いいわ、テイルス、シルバー行きましょ!」

ずんずんと魔王が歩くようにまた海へ向かうエミー。それを追ってテイルスも歩きだす。


しかしシルバーは海に向かわず、ソニック達のそばにいって、自分も体育座りをした。

海の蒼と、空の青。そして太陽の光。

改めて見ると本当に綺麗な光景で。

でも、ソニック達は普段海で泳げないし、空も飛べない。ソニックなんか、海と空に近い毛色なのに。


どんなに音速だろうと、自然には勝てないんだな、とシルバーは苦笑した。

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