ソニック

□見上げる月はいつも
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ソニックがもとの世界に帰ってから、数日が過ぎた。

悲しくて悲しくて仕方なかった僕。

でも…今は友達や家族に支えられて、元気にやっている。


そう、これが「普通」なのだ。
あの時が…「異常」だっただけで。

異常だった生活が、普通に戻った。それだけなのに。

たったそれだけなのに。

君に会えないだけでこんなに苦しいなんて。

◆◇◆◇◆◇◆◇

君がもとの世界に帰ろうとした時に、僕はその現実が受け入れられなくて

そのチャンスを…奪った。

もとの世界に戻るための機械を止めてしまった。

わかってた。ちゃんと、別れることを受け入れなきゃってわかってた。

きちんと別れの挨拶もしなくちゃってわかってたんだ。

他のみんなと別れるのも辛かった。テイルスもナックルズもエミーもクリームもみんなみんな大切な友達だったから。


君が最後にもとの世界に帰ろうとして足を踏み出したのを見て

それまで我慢していた感情が、思いが抑えられなくなって。



君は何も言わなかった。なんで機械を止めたんだとか、そういうことを一切口にしなかった。

ただ、いつものように余裕綽々な笑顔で僕を見てくれて。



僕が、これからどうする?と聞くと、「クリスに任せるぜ」というだけ。



わからなかった。彼がもとの世界に帰れる、一度きりのチャンスを奪った僕を責めることもせず、ただ僕についてきてくれる君が。


パパとママは僕を探すために警察とかいろいろなところに捜索願いをだして。

それから逃げるように僕は「思い出」の場所に君と向かった。

そこは昔、パパとママと僕で来た場所。

パパとママと僕で…最後に一緒に訪れた場所。


でも今は、パパもママも仕事の都合で滅多に家に帰ってこない。


だからパパとママは、僕のことわかっているようでわかっていないんだ。


ソニックの方がずっとずっと
僕のことわかっていてくれて


良かれとやったことが空回りしても彼は何も責めず、「クリスはクリスなんだからな」と言ってくれて。


憧れだった。
ずっと隣にいられると
ずっと君を追い続けられると思った。



自由気ままな蒼い風は
僕にいろんなことを教えてくれて、いろんなものを見せてくれた。



世界が
輝いて見えたんだ。



僕が見ていた世界なんて、ちっぽけなものだった。

だからこそ君と
ずっとずっと一緒にいたかった。

だからこそ君の
いつでも陰りのない笑顔をずっとずっと見ていたかった。


でも
それは僕の勝手な願いで。
そんな僕に君は
なぜ文句も言わずついてきてくれたの?


強い疑問が心の中で渦巻いて、ようやく君に


「ソニック…何か、いいたいこと……あるんじゃないの?」

遠回しに口にできた。
本当は僕が…いいたいのに

「何かいいたいのは…お前じゃないのか、クリス」

ソニックは僕の心を見透かしているように返してきた。僕は思っていた疑問をぶつける。


「ソニックは…なんで僕についてきたの?もとの世界に帰れなくした僕になんで…」


答えが、ただ聞きたくて。ソニックは僕の顔をじっと見つめて返してきた。

「そりゃあ、クリスは恩人だからな」

…恩人?…

「あの時…クリスがプールに来てくれなかったら……想像したくねーけど、俺、溺れ死んでたし」

そう。ソニックは僕と初めて出会った時のことを言ってるんだ。


なんとなく…なんとなく僕の家のプールに行かなくちゃって感じて、星空がきれいな真夜中に無意識に部屋から飛び出した。




そして
君に



プールの中に手を伸ばして掴んだ
君の温もり。


あの時のことを、あの時の恩があるから

恩があるから、僕と、一緒にいるの…?

「僕が、恩人だから…」
「クリス?」
「恩人だから!だから一緒にいるの!?友情とかじゃなくて…友達だからじゃなくて……ただ恩人だから!そんな理由で一緒にきたの!?」


気が付けば、大声で叫んでいた。

ソニックは少し驚いたけど、でもまた僕の方を見て。


「…友情ってのは、『自由』なんだぜクリス」


……友情は、自由?


「お前の心を決めるのは、他人じゃなければ俺でもない。他でもない、お前自身なんだ」

だから、友情は自由なんだ、っと落ち着いた声色で僕に言った。


彼らしいと思った。自由に生き、束縛を嫌う彼に


「じゃあ……僕がずっとソニックといたいっていったら…ソニックはいてくれるの…?」
「クリスがそれを望むなら」

淡々と、でもしっかりとした口調。僕は一瞬ドキリとした。


僕の望むとおりにしてくれるのなら、それならば、この世界に残って欲しい。


でも、何か違うような
君がいう、「友情は自由」と、何か、違う。


「…友情は、自由なんだよね?」
「Yes!」
「なら、ソニックの心はソニックが決めなきゃ…ソニックは、帰りたいの?」

僕の心は僕自身が決めるなら、ソニックの心はソニックが決める。そうでなきゃ、フェアじゃない。


「俺は別にどっちでもいいんだぜ?だって俺には…」

ソニックはそこで一旦区切ると、僕の目の前を走り抜けて、言った。

「この足があるからな!」
この足さえあれば、どんな世界だって見られるんだ!と、自信満々に言い放つ。


でも、今日は走っていない。

僕が、いるから。

ソニックは、自分の速さで、走って、いないんだ…

あんなに、走ることが大好きなソニックを、自由の代名詞を、縛っているのは…

「……ソニック、今日、走ってないよね……。僕がいたから……走れなかった」「…………クリス…」
「本当に、本当にソニックを縛って、苦しめているのは……僕なんだ……」



涙が溢れた。
自然に。

ソニックを、自分が縛っている。

そう考えると、自然に。


「クリスは、俺のことを、真夜中に、プールで助けてくれた」

涙が溢れて止まらない僕に、彼は唐突に口を開く。

「それは、すごいことなんだぜ?俺には出来ない。クリスだからこそ、出来たんだ」

「…でも…僕は…ソニックがいないと何も…」

「自分に自信が持てないで、他人より上に行くことは出来ないぜ」


自分に、自信を持つ…

「クリスなら、それぐらい楽勝だろ?俺はクリスを信じてる。あとはクリス次第さ!」


僕次第。
僕の、心は
僕の、気持ちは
僕の…願いは。


自分で出した答え
僕の心の答え−




…知ってるか?クリス
どんな世界にいようと
どんな場所にいようと
見上げる月は
同じなんだぜ…


ソニックは、星空の中に輝く月を指差して、微笑んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



ソニックは、もとの世界へと、帰った。

それが、僕とソニックで出した答え。

そう決めたとき、どうやって帰るんだろうなんて、場違いなことを思ったけど


「カオスコントロール」
君には、それがあったね…

好きなときに帰れたのに、最後まで、僕のワガママに付き合ってくれた…。


お人好しの
でも、憧れだった
蒼い音速針鼠…


今もどこかで、自由気ままに走っているんだろう。




帰る直前に、僕を背負って走ってくれた


あの、暖かい、君の背中の温もり。


そして、僕を背負って走っているときに見せた





君の、涙。




初めて見せた、綺麗な涙。


泣き顔は見せたくないと、僕の方を向かずに、ひたすら前を見て走った、君らしいプライド。



全部、忘れない。


世界は違うけれど

同じ時間を過ごして

同じ空を見上げて

同じ月を見上げて

僕らは、走り続けなきゃならない。


離れていても

心は…



「元気でね…ううん、またね、ソニック!」



友情は自由。
「自由」に、さよならなんてない。

また会える、その時まで−




「See you again Chris.
I believe in your heart.I hope to meet you…」





今日は満月。
君もどこかで
見上げて−






あとがき
管理人妄想MAX。
クリスって好き嫌い別れるけど、私は好きだな。

アニメではまりましたからね、ソニックは(´∀`)

というかなんで日本は53話〜未放送なんだ!早く放送してくれ!ニ●ニ●にはあったよ?

よろしく頼みますよセガさん〜。

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