スマブラ!
□偽りの
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何なのだ。
理解出来なかった。
なぜ、こうなった。
何が、どうなって
針鼠は、死骸となったプリムに、とどめの一撃をさした。プリムの四肢は吹き飛ぶ。彼の周りには既に血まみれで倒れている者が、何人、何匹といた。
指についた返り血をぺろりと舐め、針鼠はこちらに視線を向ける。
しかし、その瞳は
いつもの、鮮やかな、深緑の色ではなく、
血走って、敵意剥き出しのものだった。
殺意に、満ちた瞳。
「こんな雑魚、殺してもつまらねえな」
青い毛並みは、今は闇に染まった、深い黒。
「俺が本当に壊したいのは、人間さ」
針鼠は口の端を吊り上げる。
体からは、殺気が溢れている。
「お前、人間だよな」
いつもの彼より、声まで違う。
冷徹な、しかし怒りも含んだ、低い声色がよく響いた。
「…お前は、ソニックなのか?」
自分の思ったことを言葉にする。
「あぁ、正真正銘、ソニックさ」
青い毛色に、綺麗な深緑の瞳、それでいてムカつくぐらい余裕な態度。それが、俺の中のソニック。
しかし今はどうだ
殺気に満ちた、血走った瞳。闇を吸い込んだ黒い毛色。そして……
生き物を、人を、平気で殺める彼。
「だったら、いつものお前は何なんだ」
「さあな。ただ自分を抑えるための姿だったんじゃないのか?」
いつもの態度は、本当の自分を抑えるためのものだったのか。
内側に秘めた、あまりにも大きい力を抑えこむだけの、『偽り』だったのか。
「人ってのは、本当の自分を偽る生き物。それなのに、勝手に夢だの希望だの、くだらないものを追い続ける」
―そんなもの、壊してしまえばいい。
「そんなものがあるから、いつまでも人から『欲望』が消えない。無駄な感情を生み出す奴らなんて、生きてたってなんの意味もないだろ?」
だから、俺が根こそぎ、醜い奴らの命を、刈り取ってやるよ。
彼の瞳に迷いは無い。
どちらを、俺は信じる?
本当の『ソニック』は、
今の、殺伐とした、黒い針鼠か。
それとも、今まで見てきた、青い針鼠か。
どっちだ。
「人間ってのは、本当に無駄な感情を持つな」
「本当の俺がどっちか、迷ってるだろ?お前」
図星、だ。
「まぁどう思うかはお前の自由、だが」
「どっちが本当のソニックか、なんて疑問を抱いて、迷って苦しむぐらいなら」
俺がお前を楽にしてやるよ