スマブラ!

□ネバーギブアップ!
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自分の周りを、鮮やかとはいえない赤いものが染める。

感覚なんて、無かった。
ただ、ただ冷たい。

自分を染めるものに、溶けこんでしまいたいと思った。

痛みも感じない。
荒い呼吸だけがやけに耳に響く。

目には自身の色と同じ青空が映る。

いや、今の自分の色は、青に赤黒いものが混ざって、青空と同じ色ではないだろう。

もっと、醜い。


鉄の匂いがツンと鼻をついていたが、慣れた。

瞼が重い。
眠気が襲った。

このまま瞼を下ろせば、なんて楽なんだろう。

このまま瞼を下ろせば、自分はどうなるんだろう。


そんなことを考えているうちに、瞼は更に重くなる。

瞼を閉ざしてはいけないとわかっている。だが、体を、疲労感が蝕む。


まだ、走りたい。
走り続けて、いたい。


でも肝心の足は、動けと意志を送っても、反応しない。

何もできない。
瞼を閉じる以外、何も。


ゆっくりと、瞳を、瞼を下ろしていく。

闇への心地よい誘惑へ、あがなうことはできない。




刹那、腕を引かれた。

あまりにも唐突な出来事で、閉じきる直前だった瞳を、薄く開く。


ぼやける視界にかすかに見えたのは、見慣れた、蛇の異名を持つ男。


「こんなところでギブアップか。音速の足もあったもんじゃないな」」


ニヤニヤしながら挑発的な言葉をかけてくる男。

ぴくりと反射的に耳が動く。

男に抱き抱えられた体が、熱くなっていくことに気が付いた。

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