新旧王子様裏Room

□初夏の旋律〜雨の調べ〜
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翌日の昼ーー
昨日とは打って変わって梅雨らしい空模様だ
昨日の澄み渡った空は幻だったのか
ジメジメした空気と雨音の調べが耳を捉える
縁庭にて散歩をしていると
遠目から聞こえる足音ーー


「−−っくく。7.6.5.4.3.2.1
そろそろおいで擦ったか。
俺の求めるその姿がーー」


口角が僅かに上がるーー


「−やっと見つけた。
フラフラし過ぎでしょ?アンターー
どれだけ探したと思うんだよ!」


耳に纏わり付く程甘くて低い声ーー
足を止めずに歩き続けると
不意に服を曳かれた
振り返ると不機嫌そうに見上げる
視線とぶつかったーー


「−−おー?お前は昨日の…」


その整った顔立ちと長い髪ーー
中坊なのに一際目立つ存在感と黒いジャージ


「−−伊武深司…勿論ーー覚えてるよね?
(覚えてなくても良いけどさーー)…」


「おう。そうだ!どうした?
俺を探してたのか?」


視線をしなやかに反らすと両手に持った
ジャージをたきつけるように押し出すーー


「−−珀兎の代わりに返しに来た!
早く受け取りなよ!!」


「あぁアイツな?風邪は引かずに
済んだのか?」


「お蔭様で…余計なお世話だったけど…
とりあえず返しに来たからーー
俺の用事はそれだけ…じゃあ…」


「−−待てよ!」


下ジャージのポケットから
オレンジを取り出し
それをコイツの手の中に投げるーー
不信がりながらもそれを受け取るーー


「−−?!何ーー…いらないけど?」


「まぁまぁそうゆうなって!こんな雨で
テニス出来ねぇし暇でよ?
少し小ぶりになるまであそこの東屋で
雨宿りしながら俺の雑談に付き合えよ?」


「−−はぁ…別に良いけど…」


「−−じゃあ濡れる前にこっちへ来いよ?」


強引にコイツに肩を引き寄せて
2人で東屋の中に入るーー


「−−っちょっと///痛いんだけど?」


「?あーーワリィ加減が甘かったか?」


「−−大丈夫だし…別にもう良い…」


俺との距離を取りながら端に座るコイツーー


「そんな警戒すんなって!別に無謀に
手ーー出したりしねぇから…」


「やだ。昨日だっていきなり珀兎の
肩抱いてジャージ掛けたアンタは
信用出来ないだろう…?」


「−っ?!酷ぇな!
人の好意を無下にするとか
別に襲ったりはしてねぇだろう?」


「それでも本能がアンタを警戒しろって
言ってくるから…仕方ないよね?
俺はそれに従うだけ…」


そんなコイツに溜息を一つ零すーー
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