novel 1 


□愛の紋章 9
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 40 導愛 B



嵐がキャロルを襲った。
暴風が身体を呑み込み、雷が体内を往復した。

「ああっ…ひぃ…あああっ……」
勢いよく揺さぶられ、壊れるほど突き上げられ、キャロルは悲鳴をあげた。

シーツの上で黄金の髪が乱舞した。
激しくなされる愛の動きに、寝台の軋む音が同調した。
王の早急な息づかいと少女の嬌声が重なり、室内の熱気を高めていった。

もっと自制しなければとメンフィスは思ったが、暴走する欲求を止めることはできなかった。
ほどなく爆発的な解放がもたらされ、それでも行為を休めず、次の時もめくるめく頂点に達したが、愛の炎が鎮まることはまだまだなかった。

半ば意識を遠のかせているキャロルを、彼は今度は余裕を持った緩やかな速度で愛した。

キャロルが甘みを含んだ声音を奏で始め、徐々に艶美な反応を示す。結び合った部位がおびただしい蜜にまみれていく。そうすると男の欲望は増幅し、再び王を激しい動作に駆り立てた。

メンフィスは褥に座し、意識をとろけさせているキャロルを自身の上に座らせた。
熱塊を深々と突き立てられ、キャロルは息も絶え絶えになりながら上下に揺れ動いた。
「ああっ…はあっ…あぅ…ああぁ……」

メンフィスは途切れることなくキャロルを喘がせ、過敏に反応する部分を見つければ、そこを集中して責めた。
「ここか、キャロル」
「やあぁ…だめ…ああ!」

白い乳房の先端で尖っている実を口に含むと、少女は頭を振って悶えた。
さらに花園の上部で息づいている芽を撫でると、王の膝に乗せられた裸体ががくがくと痙攣した。
各所に一斉に与えられる愛撫に、気が狂いそうになるキャロル───

華奢な身体を残酷なほどの快楽で責め立て、甘い悲鳴をあげさせながら、メンフィスは宿敵に向かって語りかけた。

(見るがいい、イズミル、私に抱かれるキャロルを)
(私に抱かれて悦びに乱れる、キャロルの姿を)

メンフィスの名を呼び、助けを求めるようにすがりつき、悦楽の海に溺れている娘を、まるで目の前にいる相手に見せつけるごとく抱きとめながら、彼は思った。

(あきらめよ、キャロルは決して渡さぬ)
(キャロルは私の妻だ)

愛の時間は、夜が明けても終わらなかった。王がなす熱い律動は、娘の肉体を揺さぶるだけでなく、心の内にも確実に変化を呼び起こした。

「……メンフィス……」
つぶやいた唇に、唇が応えた。
指と指が絡められ、愛していると囁きが何度も降り注いだ。
青い瞳から生まれ出た涙を、
「なぜ泣く……」
メンフィスはとまどったように言い、唇を寄せて吸い取った。

身も心も愛されること。ここにいていいのだと赦されていること。
メンフィスの胸にもたれ、キャロルはその感覚をかみしめていた───





その後、昼も近くなった頃、キャロルは目を覚ました。隣にメンフィスの姿はなかった。

頃合を見計らったようにウナスがやって来て、食事の用意をした。王に指図され、事情をわかっているせいか、彼は娘の遅い起床を咎めなかった。

若き純情な武官はいつもと変わらぬ明るい態度でキャロルに接したが、彼女の無残なほど多数の痣が散らばる白い素肌と、過激な愛を受けて疲れ気味の様子を前にし、終始、顔を赤らめていた。




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