短編

□祟り寺の子
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※お試しの一話なので、続くかは未定※



「……村くん、奥村くん」

「スキヤキ!?」


先生の呼びかけに、ビクリと身体を震わせながら盛大な寝ぼけをかます奥村くん。ははあ、さてはスキヤキを食べる夢でも見てたな。

欠伸を噛み殺しながら、前の方に座る奥村くんと、その隣で驚いている様子の杜山さんを見る。


「なんやアイツ……、何しに来てん」


ポツリと、それでも奥村くんにも聞こえる大きさでそう言い放ったのは、意外にも勝呂くんだった。

振り返る奥村くんに釣られるように、私も少しだけ視線を動かしてそちらを見やる。

すると、私が座っているのは彼より後ろの方だから表情は伺えないが、明らかに不機嫌なオーラを放つ勝呂くんが居た。案外、真面目な人なんだろうか。

そしてまた一言、「帰ねや!」と言う勝呂くんを一見して、奥村くんは再び前を向き、


「フフフ……」

「奥村くーん! しっかり!」


二度寝をかました。自由だなあの子。

勝呂くんの方からも舌打ちが聞こえてきたし、なんだか一発触発でもありそうな雰囲気だ……と、これからのことが心配になり小さくため息を吐いた。

その後の悪魔学や、グリモア学でも彼はやらかし続け、その度に勝呂くんの背後に般若が浮かんでいるような感覚に襲われた。いつか爆発していまいそうだ。桑原桑原。

触らぬ神に祟り無し、と自分に言い聞かせて授業に集中するも、やはり奥村くんのコックリコックリと舟を漕ぐ様子が気になってしまう。うん、私も寝たい。

そして、悪魔薬学の時間になり、前回やった小テストが返されることになった。

次々と名前が呼ばれ、問題の奥村くんの番。


「胃が痛いよ……どうする気なのそれ……」

「……スンマセン」


どうやら、先生や奥村くんの反応から察するに最悪らしい。何点なんだ。

次の呼ばれた勝呂くんが、奥村くんの横を通り過ぎざまに彼を睨みつけ、


「二点とか狙ってもようとれんわ。女とチャラチャラしとるからや、ムナクソ悪い……!」

「は!?」


二点、二点……まじかよ奥村くん……。

勝呂くんは答案用紙を受け取り、得意げに奥村くんへ点数を見せ付けるように紙を裏返す。

当然、その点数はこちらにも見えてしまうワケで。


「まじか……」


勝呂くんは、思っていた以上に真面目なようだった。勝呂くんの言葉を借りるなら、狙ってもようとれんわそんな高い点数……といった感じだ。


「安本さん」

「あ、はい」


先生に呼ばれ、ハッとして答案を受け取りに行く。

手渡された答案には、可も不可もない平凡な点数。なんだろう、いつも通りなハズなのに勝呂くんの点数を見た後だと……なんだか複雑な気分だ……。


「応用の問題を頑張りましょうね」

「う、が、頑張ります……」


苦笑いをしながら用紙を受け取り、未だに騒いでいる勝呂くんと奥村くんを横目に席へ戻る。

復習もこれからちゃんとしなければ……。

先生や、勝呂くんのお友達である志摩くんと三輪くんが喧嘩を止めに入り、二人に距離を取らせたところでチャイムが鳴った。

ああ、次は確か体育の実技だ……と、ぼんやりと考えながらジャージに着替える為に教室を後にした。




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