妄想話
□スノウホワイト
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「鏡よ鏡、この世界で一番美しいのはだあれ?」
「麗しきジヨン王女様、ここではあなたが一番美しい。けれどもテソン姫はその何倍も美しい。」
「知ってるって!!」
今日も魔法の鏡は同じ事を言います。
ジヨン王女は美しく、地位も名声も手に入れました。そんな王女を悩ませるのは…
「問題はテソンが可愛すぎる事だ。あの可愛らしさを俺だけのものにしたい、最近輪をかけて日に日に可愛らしくなっていくテソンをどうしたら独り占めできるんだ…」
麗しき王女のもっぱらの悩みはこんな調子でした。
コンコン。
ジヨン王女は慌てて鏡を隠すように布をかけました。
「テソンです、ジヨン王女よろしいですか?」
そっと開けられたドアのわずかな隙間からひょいと顔を出しているのは、愛らしいこの国の姫、テソン。
「テソンア〜♡♡」
その声を聞いた者は全員虜になってしまいそうな甘い声で名前を呼び、ジヨン王女はすぐにテソン姫を両腕で抱き締めました。
「苦しいですよ、王女様。」
「だあーってかあーいーんだもん」
抱き締めたテソン姫の頬に接吻を降らせます。
「ところで御用はなんでしょう」
「あ、そうそう。実はテソンアにお願いがあるんだ。」
「なんでしょう」
「おまえは可愛い。最近は可愛らしさに加えて色気まで出てきてる。」
「そんな、こんな僕をそんな風に言うのはジヨン王女だけですよ。」
「そこ!そう言う無自覚なところが余計ダメなの!」
「…はあ」
「このまま城に置いておいたらどんな輩に襲われてしまうか、俺は毎日気が気じゃないんだよ!!!」
「まさか、僕なんか」
そう言いながら自分の右手をジヨン王女が両手で包み頬擦りするのを見つめていると
「だからね、テソンア。お前の為に家を建てたんだ、森の奥に。」
「え?」
「オール電化、Wi-Fi完備、バスルームは俺のデザインでこだわり抜いたんだあ。寝室にはキングサイズのベッドとウォークインクローゼット、四季を通して快適に過ごせるように国で1番のデザイナーに設計させた。」
「え」
「お前と離れて暮らすのは寂しいけど、お願い。その時が来たら必ず迎えに行くから、それまで誰の目にも触れずにひっそりと森で暮らして欲しい」
いつになく真剣なジヨン王女の目力は半端じゃありません。
「うっ、わかりました。僕動物好きだし、森での生活も楽しみです。」
「ありがとうテソンア。これだけは約束して。絶対に誰にも会わないで。」
「はい。」
こうしてテソン姫は急に森の奥で一人暮らしを始めることになりました。