妄想話

□アンダースタンド
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「…んっ、んっ、んん…っ」

ただ今宿舎のバスルーム前の着替えスペースにいます。俺。

ザーーッ

風呂場の床を打つ水温と、そして堪えるように控えめに響くかわいい喘ぎ声。

今にもそのドアを突き破って侵入してしまいたい衝動を押し殺して、俺は今テソンのパンツを握りしめていた。



時間を遡ること30分前。

「たっぴょん、お風呂使う?」

「んーん、テソナ使っていいよ〜」

「ありがとうございます。じゃあお先に頂きます。」

図々しい末っ子と違っていつも奥ゆかしいテソン。俺のお気に入り。
何だか居心地が良くていつも隣に行ってしまう、俺を見て欲しいかまって欲しいと思ってしまう。デビューしてから目まぐるしい活動の中、俺の最大の癒しはテソンの存在だった。

「あ、ヒョン。まだリビングにいる?」

「え?なんで?」

「いえ、あの、お家帰るのかな…って思って。」

俺はつい最近この宿舎を出て一人暮らしを始めた。が、当然一人暮らしの部屋にはテソンがいない訳で。結局恋しくなるとここへ入り浸っている始末。

「今日はもう遅いし、泊まってこうかな…またテソンのベッドで寝ていい?」

既に俺の寝床などこの宿舎には無い。
そんな俺に枕を貸してくれるのはジヨンでもヨンベでも、ましてやスンリでもなくこの心優しいテソンだけ。
男二人が一つのベットを使うのは窮屈だし不便しかないが、警戒心の強いテソンがそこだけを許してくれる事に俺は甘てしまっていた。

「うん、もちろん!あ、でもちゃんと早起きする約束ですよ!」

とか言いつつ寝坊する俺を苦笑いして許してくれるのはもう把握済みだよテソン。
そう告げるとバスタオルを胸に抱いて浴室へと消えていった。

〜♩

「ヨボセヨ?ジヨン?…え、今宿舎だけど、あ、そうなの?わかった。テソンにも伝えとく。あーい、おつかれー」

ジヨンからの電話の内容は、ヨンベ、スンリと共に今夜は帰れないという内容だった。
以前から俺たちのスケジュールは滅茶苦茶で、全員がここに揃う事など週の半分も無かった。

怖がりのテソンはきっと一人だと色々抱え込んじゃうだろうから、今夜ここへ来た事は間違いでは無かったと思えた。

そうだ。ジヨンが隠し持っている酒を開けちゃおう〜。
普段メンバーの顔色を気にして突っ込んだコミュニケーションをあまり取れずにいたので、滅多に訪れないテソンと二人きりの夜に俺の胸は僅かながら高鳴っていた。

「…テソン、明日何時起きなんだろ…」

それによって今夜のプランはだいぶ左右される。いかんせんストイックなの男カンデソン。もし明日の予定に余裕があるなら今夜は二人で夜更かしを楽しみたい。
一度気になってしまうと今すぐどうなのか確認したい、一刻も早く聞いて今夜のプランを色々吟味したい!


と言うのがつい五分前の話。


そのまま一目散に浴室の方へと向かう。
引き戸を引いた先に更衣スペースがあり、その奥に浴室のドアがある間取り。

一応、警戒心が強いテソンを思い、そうっと引き戸を引く。
更衣スペースにあるカゴの中にはこれからテソンが着るのであろう綺麗にたたまれたスウェットとTシャツの上にこれまた丁寧にたたまれた黒いボクサーパンツが置かれていた。
それを眺めて思わず、ふっと笑みがこぼれる。

と、その時。

「う…っ、んっ」

浴室から唸るようなテソンの声。
思わず耳を澄ましてしまう。

「…はっ、んっ、ん…っ」

浴室にエコーするいつもの何倍もセクシーな吐息交じりのその声は、間違いなくテソンのものだ。

俺の胸に込み上げて来たのは嫌悪感でもなく、全開の好奇心と独占欲。
もう一歩踏み出して、耳をそばだてる。
無意識にカゴの中のボクサーパンツを握りしめていた。


と、それから現在に至る。


直視出来なくても明らかな、その声が示す浴室の情景。
そりゃあ、テソンだって立派な男だ。
いくらストイックで怖がりで笑顔が可愛くたって性欲くらいあるはず。それは良い。
ただ俺が気になっているのはその対象についてだ。
テソンは一体何に欲情するの?
誰を思って自分を慰めているの?

何故か胸の奥がモヤモヤした。

あの洗練された、且つ未熟さも感じさせるテソンの肉体がいま曇りガラスのドア一枚向こうで欲情して、しかも自分の手で自分を昂り慰めているなんて!

「うおっ!」

思わず出た声に慌てて自分の手にあったテソンのパンツで口をふさぐ。

「ぅわっ!」

口元にあるパンツに気づき更に半分パニクり声を上げる。テソンのパンツを元あったようにたたんで置いて出来るだけ急いで、出来るだけ音を立てないようにその場を後にする。

「はあはあ、」

…やばい。
直接見た訳でもないのに、テソンの自慰行為にこんなに興奮してしまうなんて。
気がついたら俺のムスコもすっかり反応してしまっていた。

え、男に、しかもメンバーでもあるテソンに、俺は何勃たせてんだよ!

と、現実的に自己嫌悪しながらもその熱は治らず。

バタンッ。ガサゴソ。

浴室の方からはシャワーの水音が止み、何やらテソンが動いている気配。

「やばいっ!」

テソンにこの痴態を晒すわけにはいかない!
慌ててトイレへ駆け込み、俺はそこで欲望を満たすための行為に没頭する。
その時頭の中に思い描いていたのは…





「タッピョン?」

「テ、テソン。さっき電話あって今日はみんな帰れないって」

「みんなって、スンリも?」

「うん、だから今夜は二人だけだよ…」

「…そっか」

すっかり部屋着姿になったテソンはバスタオルを首にかけ、洗いざらしの髪の毛と肉厚な唇のコントラストが堪らない。

出してスッキリしきった俺はすっかり罪悪感も忘れテソンに擦り寄って尋ねた。

「でもテソンのベッドで寝たいなあ」

「…はい、僕も…そうして欲しい」

そう言ってテソンの頬が赤くなったのが、湯上りだからか、はたまたこの夜に特別な意味があったからなのかはまた別のお話。




END



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両片思い系。
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