妄想話
□ダンデライオン➂
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「すんひょにひょおん!」
「テソンちゃん!」
「もう、ちゃん、やめてえ」
「ふふ、じゃあテソン?」
「はあい。」
「可愛い…明日から年長さんだね。」
「うん!かっこいい年長さん、なるの!すんひょにひょんは二年生さんだ!」
「二年生かっこいい?」
「うん!すごくかっこいい!」
スンヒョンくんのお気に入りのキラキラした笑顔で、胸の前で小さな手を合わせて拍手してくれるテソンちゃん。
「テソンが一年生になったら一緒に学校行けるね!」
「やったあ」
「早くおっきくなってね、テソン。」
「うん、おっきくなってすんひょにひょんと学校いくー」
すっかり春らしくなった近所の公園、二人はスンヒョンくんが小学校へ入学した事を機に幼稚園の頃のように毎日会うことができなくなってしまいました。
その空いてしまった時間を埋める様に土日はずっと一緒にこの公園で過ごしているのでした。
「ひょおん、また、たんぽぽのゆびわ、ほしいな」
「え…」
スンヒョンくんは思わず息を飲みます。
なぜなら小学生になったスンヒョンくんを囲む環境は目まぐるしく変化しました。
テソンちゃんと会えなくなっただけではなく、勿論新しいお友達も沢山出来ました。
そんな中、一年生の夏休み前の教室で女の子達がスンヒョンくんに聞いてきたのです。
「ねえ、スンヒョンくんは好きな子いる?」
「うん!テソンちゃん!」
「何組?」
「まだ幼稚園の男の子!結婚する約束した!」
意気揚々と言ったスンヒョンくんに女の子達はこう告げました。
「男同士は結婚出来ないんだよ!」
女の子達の一人が放った一言にスンヒョンくんの頭は真っ白。その日帰ってからオンマに抱きついてテソンちゃんと結婚出来ないと大泣きしてしまったのです。
ところが優しくて美しいスンヒョンくんのオンマはこう言いました。
「スンヒョン、あなた達が大人になる頃には社会も少しは変わっているかも。あなたがテソンちゃんを好きな気持ちはとても素敵な事だから胸を張っていなさい」
そう言われてスンヒョンくんの涙は止まりました。
そうしてスンヒョンくんは今でもテソンちゃんをお嫁さんにする事を諦めず、変わらぬ愛と優しさで守ってあげています。
しかしそれと同時に、離れてしまった分テソンちゃんが心変わりしてしまわないかと言う不安にも苛まれていたのでした。
「たんぽぽの指輪は…特別なんだよ」
「うん、お嫁さんになるときにもらうの!」
「そうだよ、だからもっとおっきくなったらあげるから」
「ぼく、今日もすんひょにひょんのお嫁さんなりたい!」
「えっ!」
荒くなる鼻息と開ききった瞳孔と途端に真っ赤になった頬に、興奮が抑えきれていない様子のスンヒョンくん。
「お嫁さんになりたいときにゆびわ、もらえるんじゃないのお?」
「うん!そうだよ!あげるね!指輪!」
「わあい、またすんひょにひょんのお嫁さんになるー」
そうしてキラキラのニコニコになるテソンちゃん。こんなに可愛らしい笑顔を自分だけのものに出来たスンヒョンくんはすっかり有頂天です。
「一緒にたんぽぽ探しにいこー!」
「うん、すんひょにひょんにゆびわもらうー」
そう言って幼い二人はぎゅっと手を繋いで公園の隅にある草はらへと向かったのでした。