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「何でそんな顔してるッスか?」
いきなり現れた人の姿に、まずびっくりした。
次には苦笑が浮かぶ。
「そんな顔してた?」
「してた」
真っ白い空間。地面と空との境界線は分からないが、地に足が着く感覚はあった。
この世界には見られない服装に、金髪碧眼と言えばカッコ良く聞こえるが、どちらかと言えば可愛い印象の人。…いや、カッコイイんだけどね。
私と同じく苦笑していた彼の顔が、悲し気なものに変わった。
「……ごめん」
「違うでしょ? 謝らなきゃいけないのは私」
「俺の為だったんだろ?」
「それはどうかな」
「ぇえ〜?」
切ない顔に笑って返せば、情けなく笑って見せる。
手を伸ばしても、触れるにはまだ遠い距離。
私も彼も、その場から動こうとはしない。
「レン、幸せになるッスよ?」
「もうなってるよ」
「……ちゃんと、本当の幸せを掴んで欲しいんだ」
見透かされているような気がして言葉に詰まる間に、真剣な瞳で笑う彼の姿は消えていた。
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