T

□‡10
1ページ/31ページ



--------------------


「にしても、人騒がせな魔王だよな〜」

「全くです」


 長い事向こうに居た訳でもないのに懐かしく感じる、慣れた空気。
 向こうに居た間は殆ど自覚が無かったが、こっちとあっちじゃ空気が違うらしい。

 やっぱ慣れた場所が一番楽だ。


「つーかよくあれだけあっさり納得したよな」


 椅子に座ってジークに視線を向ける。奴はベッドで眠るレンの隣に腰掛けていた。

 場所は王都の宿屋。
 前にジークが取っていたのと同じ宿屋の、同じ造りの部屋だ。


「現魔王も強行派ではないようでしたからね」

「あの接触の仕方は充分強行派だろ」


 呆れを含ませて言う。“実力行使”とか言ってたぞ。

 まあ、直接話した限りじゃ悪い奴には見えなかったが。


「それだけ大切な友人だったという事でしょう」

「…何者なんだろうな」


 魔王が実力行使も厭わない程に大切だというアリス。

 そしてその魔王が言った事に、俺は少し引っかかりがあった。


「危険じゃない、って言ってたな」

「……何か事情があったのかもしれませんね」

「事情?」



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ