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「にしても、人騒がせな魔王だよな〜」
「全くです」
長い事向こうに居た訳でもないのに懐かしく感じる、慣れた空気。
向こうに居た間は殆ど自覚が無かったが、こっちとあっちじゃ空気が違うらしい。
やっぱ慣れた場所が一番楽だ。
「つーかよくあれだけあっさり納得したよな」
椅子に座ってジークに視線を向ける。奴はベッドで眠るレンの隣に腰掛けていた。
場所は王都の宿屋。
前にジークが取っていたのと同じ宿屋の、同じ造りの部屋だ。
「現魔王も強行派ではないようでしたからね」
「あの接触の仕方は充分強行派だろ」
呆れを含ませて言う。“実力行使”とか言ってたぞ。
まあ、直接話した限りじゃ悪い奴には見えなかったが。
「それだけ大切な友人だったという事でしょう」
「…何者なんだろうな」
魔王が実力行使も厭わない程に大切だというアリス。
そしてその魔王が言った事に、俺は少し引っかかりがあった。
「危険じゃない、って言ってたな」
「……何か事情があったのかもしれませんね」
「事情?」
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