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宿屋に着くなりフロントから“ラス様がお見えになってましたよ”との報告を受けた。
予感的中。
全く、逃げた所で仕事が減る訳でもないだろうに…。
俺が不在だと聞いてすぐに帰ったらしいけど。
レンはベッドの上で丸くなっていた。
朝ここを出た時と殆ど変わらない光景に思わず笑みが浮かぶ。
ベッドに腰掛けるとピクリと耳を動かし、続いて顔を上げる。
「…おかえり」
「ただいま」
声と態度から察するに、今の今まで寝ていたようだ。
「どうだった?」
横になったまま伸びをして、窓を向いていた体をコロンと転がしてこっちに向ける。
とりあえず一通りの事を説明した。
リロイの話を聞くと、弾んだ声で“会ってみたい”とはしゃいでいた。
「そのうち会えるよ。でも調子に乗って喋ったりするなよ?」
「分かってるって〜」
俺の懸念など露知らず、のほほんとした返事をするレン。
それを見ると自分が考え過ぎなような気がしてくるが、こればっかりは用心しておくに越した事は無い。
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