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「おかえり。怪我は?」


 それまで居座っていた洞穴の入口から退きながら、口を挟んだ男へと振り返る。


「少し掠った」


 声の主の姿が陽の光で視認出来るようになると、確かに左腕が紅く染まっていた。


「結構深いじゃん。油断でもした?」

「ちょっと遊び過ぎただけだよ」


 比較的深い傷に痛みで顔を歪めるでもなく答える。


「そ〜ゆ〜のを油断って言うの」


 ヤレヤレと思いながらもとりあえずは傷に治癒を施す。

 傷は左腕のものだけのようだ。服が黒い為に目立たないが、よく見ると他にも多少血の染みが付いてはいる。でもそれはジークのじゃなく、先程まで彼の相手をしていた者の物だ。



 すっかり傷の塞がった腕の曲げ伸ばしをしたりして動作確認をする。


「やっぱりレンの治癒は良く効く」

「お褒めに預かり光栄ですわ」


 上級魔族を相手にしていたとは到底思えない、普段通りのジーク(私もだけど)



 相応の事をしてくれた相手に対する慈悲なんぞ持ち合わせてはいない。

 敵として対峙し、尚且つ情を掛ける余地の無い相手に対して、それは当たり前の事だ。



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