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多少フラつきながらも、予想していたよりずっとしっかりした足取りで隣を歩く男。
しょっぱなから慣れ親しんだ者にするような口調だったが、男のサバサバした厭味の無い雰囲気のお陰で嫌悪感は感じなかった。
俺の敬語も使わなくていいと言われたが……生憎この態度を変えるつもりが無い俺は“誰にでもこうだから”と断った。
ただ名前だけは呼び捨てでと聞かなかった為に、名前は互いに呼び捨てだ。
何でも、敬称付けは好きじゃないんだとか。
歳は23。王国守護騎士だという。
「聞いたような気がしていましたが……ラス・リード・サフィア殿でしたか」
王国守護騎士のラスと言えばそれしか無い。
驚いたように言えば、男――ラスは明らかに嫌そうな顔をした。
「“殿”なんか付けんなよ」
予想通りの嫌そうな顔の理由に思わず笑った。
「分かりましたよ。で、ラス殿はこれからどうするおつもりですか?」
「……お前…性格悪いだろ」
ぼそりと呟くラスに、また笑った。
俺が素に近い状態で接する事が出来る数少ない人間とは。
珍しい。
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