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「もしだ、仮に魔界へ行けたとしても、果たして魔王との交渉が上手く行くか。……可能性は極めて低い」


 それもそうだ。
 “実力行使も厭わない”程にアリスの解放を望む魔王が、こちらの妥協案に乗るか。

 激しく疑問だ。


「交渉する者の身も危険に晒される」


 苦渋の表情で会話に入ったのは難しい顔で状況を見ていた国王。
 争い事を嫌う穏健派なだけあって、その危惧は当然のものだろう。

 何せ全くと言っていい程状況の分からない敵陣のど真ん中に乗り込むんだ。場合によっては……いや、かなりの確率で。死に直結する。

 国王としては、むざむざ死なせるような状況に向かわせたくはない、と言いたい所なんだろうけど……。

 それでも今は、そんな事を言ってられる状況じゃない。


「そうなったら俺が行きますよ」


 言おうとしていた事を先に言われて、僅かな驚きと共に声の主を見る。

 他の人間も同様に、声の主―ラスを見ていた。


「だが「俺も、行きます」


 国王が言いかけたのを遮って、負けじと口を開いた。



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