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 そこから少し歩いて部屋に着くまで、会話は無い。

 話してる所を誰かに見られても困るから、人が居る(居そうな)場所ではいつもそうだ。


 レンは意思での会話が可能だが、俺はそうじゃない。




「どうした? もう帰ったのかと思っていたが」

「げ」


 部屋には人が居た。
 嫌という程に見慣れた男、ザジが書類片手に窓際に立っている。
 職務時間を回ったお陰で、言葉遣いはプライベートバージョンだ。


「何だその反応は。居たら悪いのか? ここは俺の仕事場でも……その猫何だ」


 奴が居た事に不満な反応をした俺(人が居たらレンと話が出来ない)に、これまた不満を返しかけ、レンに気付いて疑問に変えた。


「知り合いの連れだ。まだ帰んねえのか?」


 答えながら中央のソファーセットに向かうと、レンももそれに続く。


「……心配しなくてももう帰る所だ」


 言いながらも怪訝そうなザジ。


「……その猫雌か?」

「あ? そうだ」

「遂に種族の壁すら越えたか」


 疑問に続いた台詞に、膝の力が抜けて思い切り蹴躓いた。



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