an abandoned kitten
□第一話
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暗い部屋…否、地下部屋といった方が正しいだろう。
地下部屋に一人の少年がいる。部屋には鍵が掛かっており、ベッドやトイレといった物はなく、周りは石で作られた壁で囲まれている。
少年は闇と同化できるぐらいの黒髪に、血で染められたような紅い目。洋服はボロボロになっていて、体には擦り傷や火傷、切り傷など数えきれない程の傷が刻まれている。
身体は痩せ細っていて、十分に食事が与えられていないことがわかる。
少年に表情はなく、例えるなら人形…だろうか。
少年の両親は少年を“存在しないもの”として扱っている。
少年はそれまでにどれだけ愛情を貰おうと望んだことか…。
それでも両親は少年に愛情を注がなかった。
そんな少年は一度だけ、動物を見たことがある。
――猫だ。
少年はその猫を見て、唯一の“光”だと思った。無愛想な猫は少年に、ちらっと一瞥し何処かへ消えていった。
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