Un bel funerale
□2:Una domanda
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静寂を切ったのは低い男の声だった。
「……悪いことをしたな」
「えっ……」
かけられるとは微塵も思っていなかった謝罪の言葉に意識を引き上げられる。
「突然のことで少し冷静さを欠いた。痛かっただろう。立てるか」
「あ……」
差し伸べられた手に、今までよりも少しだけ穏やかな声に、張り詰めていた糸が切れるように体の力が抜けた。おずおずと右手を差し出すと、ごつごつと骨ばった大きな手に掴まれる。合わせて立ち上がろうと足に力を込めたが思うように動いてくれない。腰が抜けたらしい。
「ご、ごめんなさい」
「いや……」
男の人はゆっくり私に近づくと、さっと抱え上げてしまった。あまりにも突然のことで狼狽える。これは流石に相手に悪い……気がする。いやいきなり怪我させられた私が言えたことじゃないんだけど、これはなんていうか、すごく恥ずかしい。私自身暢気なやつだとは思うけど。
おろおろしている間にリビングらしきところについた。低めのテーブルを囲んでいくつかソファーが並んでいる。フットライトが一か所だけついていて、この人はそれを頼りに歩いてきたのかと思った。ちらっと視線だけで男の人を見る。そして息をのんだ。相当な美形だ。通った鼻筋、キリっと引き結ばれた薄い唇に、少しだけ色の悪い白い肌。銀色の髪がわずかな灯りで透き通っているような、輝いているような。とにかくきれいな人だなと思った。
「……どうした」
「あっ、いえ、なんでもっ、……痛っ」
見ているのがバレたかと思って無駄に取り繕ってみたが、思い出したように左腕が痛みだした。少し待っていろ、とだけ言って私をソファーに降ろすと、男の人はどこかへ行ってしまった。
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