せいしんせかい。
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「っつう……」
目を覚ますと見知らぬ白い天井。ジョースター邸ではない。私の家ではない。
これは、アルコールのにおいだろうか。保健室と同じにおい。ここは、どこだろう。ひどく頭が痛い。目の前がかすんでいて、ぼーっとして……
「(……ここは)」
何故だかひどく居心地が悪い。
耐えかねて視線を彷徨わせると、ベッドサイド(私はベッドに寝てるのか)に誰かが座っているのが見える。
長くて癖のあるくすんだ金髪、肩幅が広いから男だと思う。左腕にはギプスがしてあるみたいだ。
「……だ、れ?」
寝起きのせいか声が出ない。息が漏れるようなかすかな音でも、静かな部屋だから聞き取れたらしい。男は振り返ると、私を見て顔色を明るくした。
「おおっ! 目を覚ましたか! ちょっと待ってな、今医者を呼んでくる」
「ん……」
かすんでいるせいで、誰だか分からない。知らない声だ。知らない人だけど、きっと悪い人じゃない、と思う。誰だろう、わからない。頭痛のせいか頭が回らない……こうなる前は、私は何をしていたっけ、誰と一緒にいたっけ。
──少しいいかな
「……でぃお」
夢を見ていたんだ、私は。周りに関心を持てない私が、流されてばかりの私が、得ることを知らない私が、捨てることしかできない私が。
人を好きになってみたくて夢を見ていた。
「(熱い……)」
触れた額はとても熱くて、熱に浮かされていたことがわかる。頭痛もそのせいだ。
明日は学校を休もう。それから、お義父さんに頼んで少しだけ甘いものを食べさせてもらおう。布団でゆっくりしよう。それから……
「(あれ、)」
お義父さんって誰だ?
私には血のつながった父がいるから義理の父なんていないのに。
そういえばなんでここを、“ジョースター邸じゃない”なんて、最初に思ったんだろう。
どうして ?
だんだんひどくなる頭痛を押さえながら思いを巡らせていると、ドアの開く音がして、人が二、三人入ってきた。
「ここ、は」
「病院だよ。さ、起き上がれるかな?」
怠い体を起こすと医者と思しき人が優しく手首に触れた。
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