そして鬼は人と成る

□弐
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咄嗟の事ではあったが、反応して上体を低くする。瞬間、壁を突き破って何かが頭上を通った。それも複数。部屋を破壊しながら不規則に跳ねる。愈史郎の血鬼術が解けたことで外に鬼の気配を感じられるようになった。二体いる!

僕は唯一の人間である炭治郎を庇いながら相手の血鬼術を分析しようと試みる。家屋を破壊したのはどうやら鞠のようだ。それらは壁で跳ね返るだけではなく空中でも複雑に軌道を変えている。

これは一つの血鬼術によるものか、それとも二つの血鬼術を合わせているのかはまだ判断がつかない。くそ、土埃が邪魔だ! 肝心な事が何も判っていないじゃないか!
このまま攻撃が続くようなら奥で眠っている女性が危険だ。安全なところへ避難させた方がいい。

「禰豆子! 女の人を外の安全なところへ!」
「外よりも地下のほうが良いだろう! 案内する、ついておいで。炭治郎、僕が戻ってくるまで任せるぞ!」
「はい!」

廊下を駆けながら擬態する。女性とは玄関で一度顔を合わせているから、この物音もあるし余計な不安を掛けたくはない。
姿が変わっていく僕を見て禰豆子ちゃんは首を傾げていた。


部屋に着いたが、女性は眠っていた。傷は深くはなかったが、決して浅いわけでもない。出血による疲労があるのだろう。

「禰豆子ちゃん、僕が彼女を抱えるから、君はあそこの毛布を持ってきてもらえるかな」
「ムー……」
「んー……」

女性は禰豆子ちゃんに運んでもらうことになった。あんなに切ない眼をされてしまってはこちらが折れるしかない。まあ、兄ちゃんに頼まれた事は自分でやりたいと思っているよな、そりゃあ。ごめんな禰豆子ちゃん、ありがとうな。



地下へ連れていき寝かせたところで、女性が目を覚ました。心配そうに目を向ける禰豆子ちゃんに先に戻ってもらい、僕は簡潔に状況の説明をしてから戻った。
我ながら「電気系統が壊れてしまって修理してるけど不慣れだから騒がしくなっちゃって」、とはあまりにも無茶苦茶だ。もう少しましな事は言えなかったのかと僕自身でも少し考えたが、どう言い訳しようとこの破壊の音を誤魔化す事など出来やしないだろう。
女性にはここで待っているように言い、廊下を急いだ。まともに戦う事は出来ないかもしれないが、被害を拡げないように立ち回る位は出来るだろう。




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