Un bel funerale
□4:esecuzione
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「ホルマジオさん、出かけるんですか?」
「おっ、名無しお前今日はずいぶん元気そうじゃあねーか」
「いつも元気ですぅ〜」
うはは、と軽口をたたきながらいつも通りを装う。「しばらく帰ってこねーかもなあ〜」というホルマジオさんに「それは寂しいですね」と返して機会をうかがう。
ホルマジオさんが踵を返してドアに手をかけたところで、思い出したように「あっ!」と声を上げる。
「そういえば暇だったのでぬいぐるみ作ったんですよ、ちっちゃいの」
ポケットからネズミを模したぬいぐるみを取り出した。裁縫初心者にいきなりぬいぐるみ、しかもてのひらサイズっていうのはかなり難しかったけどなんとかものになっているはず、だ! フフンどうだ、かわいいだろう!
「なんだこりゃあ? ……猫か?」
「ネズミです。……もう猫でいいですよ猫で」
「あーネズミ。……見えないこともねえか……?」
「優しさが痛いっ。えっと、これをお守り代わりにしてください。しばらく帰ってこられないならなおさら。知ってます? ネズミって実は幸運の象徴だったりするんですよ」
ほー、それは初耳だな。と尻尾をつまみ上げてしげしげと見つめる。あー粗が目立つっ!あとは“中身”さえバレなければ、途中で捨てられなければ大丈夫なはずだ。
「それじゃあ拝借していくとすっか」
「ほえ〜作った甲斐がありました。ちゃんと返してくださいね」
「くれるんじゃあねーのかよ」
「それ見ながらもうちょっといっぱい作るんですよ」
それじゃあいってらっしゃい、ホルマジオさん。
見送った後もしばらく扉を見つめていた。
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