せいしんせかい。

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 ディオは、生きている。

 そう確信した。ジョナサンがツェペリ男爵のもとで修業を始めたということだった。血の因縁は私ごときでは止まることはないのだと、そういうことだろう。

 ジョナサンを応援したい。まだこの時代の台所には慣れていないけど、サンドイッチを持って行ってあげたりとか、なんかあるじゃんね。でもできない。
 お留守番である。

 繰り返そう。お留守番なのである……!

 眠ってしまう症状が原因なのだけれど、前回が変則的だったために私は安全な場所で待機ということになった。つまり暇である。やることがない。
 なにかできることはないものかと唸ってみたけどないんだなーこれが……!


「……できることさえあれば、いいのになあ」


 私はどこまでも無力だ。肝心な時に眠ってしまうし、いつまでも足手まといで。このままではジョナサンが死んでしまうというのに、何もできない。見ていることしかできない。

 あの日、お義父さんを見捨てていれば、また変わったのかな。この手にすくえるものなんてたかが知れている。欲張りすぎたんだ、私は。
 人が死ぬのは運命だ、この世の摂理だ。特に「この世界」においては。


 外がだんだん暗くなって、少しだけ開けていた窓から冷たい風がひゅるりと吹き込んでくる。この辺りは街灯がないから、日が落ちると真っ暗になる。今日も晴れていたから、星がきれいに見えるだろう。少ししたらみんなも帰ってくるし。

 窓枠に手をかけて乗り出すように空を見る。落ちないように気を付けないと、受け身が取れないから落ちたら死ぬな、あっこわいなと思ってやっぱり床にしっかりと足をつけた。都会では見られないような満天の星を数えながら、ジョナサンの帰りを待つ。

 ちょうどその時、視界の端に大きな影が入り込んで、カラスかとしっかりそれを見ようとした瞬間。それに持ち上げられた。持ち上げられた?


「えっ?! なに、」

「ディオ様のご命令だ」

「は? それなん、」


 一瞬で下から上へと景色が切り替わる。お、落ちて……!?


「ええええええええええええええ!?」


 そして体にグッと強く圧がかかるのを感じて、パニックになって、そこから考えるのをやめた。




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