From this day

□クロロの仲間たち(フィンクス・フェイタン編)
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 マチ、シズクとの邂逅から一週間。ひたすらこの世界に慣れようと室内で体力作りを行っていた最中だ。突然鳴ったチャイムをいつものように無視していたら、あろうことかクロロから一言「出ろ」と言われ戸惑った。珍しいこともあるものだ。今回に限って居留守は使わないのだな。変な勧誘だったら私が対応してしまっていいのだろうか。能力者だったら、さすがにクロロは気付くよね?
 様々な思考を巡らせながら、ぎこちない凝で玄関まで行き、一旦鍵を開ける前に訪問者の確認を実施する。スコープを覗き、更に目を凝らした途端、
「ひ……!」
 思いきり後退り、バランスを崩して尻から転んだ。痛いなどとは言っていられない。だって、この扉の向こうには、
「……フィンクス、さん……」
「事前に教えると、お前面倒だからな」
 敢えて黙って呼んだんだ。奥から聞こえたのは、しれっと言い放つクロロの声だった。この男、と怒りで拳を握り締めるが、もう一度鳴らされたチャイムに大袈裟なほど肩が跳ね上がる。
「早く開けてやれよ」
 今すぐ掴みかかりたい衝動を抑え、半泣きで解錠へと向かう。ゆっくりと開き僅かな隙間から顔を覗かせれば、ジャージ姿の厳つい顔面がすぐ上にあった。
「ああ? 誰だテメェ」
 しかもどうやら言ってない。咄嗟に閉めようとした私を尻目に、易々と扉の隙間へと靴を挟んでくるその動作にドアノブを握る私の手は完全に固まった。まるで悪徳訪問販売のようだが、自ら対処できるという点ではあちらの方が何億倍もマシである。よりにもよってなぜ次がこの男なのだ。フランクリンさんという選択肢はなかったのか。挨拶すべきはずの唇は震え、背後でクロロが笑った気がした。
「団長の女か?」
「っ、違」
「違わないだろ。久しぶりだなフィンクス」
 今更のこのこと顔を出したクロロを恨めしそうに振り返り、彼は私の後ろから遠慮なく扉を全開にした。間近で感じるこの重厚なオーラは、これまで会った誰よりも強く、そして純粋に思えるほどだった。クロロの指先に促されるまま背中へと回った時、ようやく対面を果たしたフィンクスの表情がとても嬉しそうに見えてしまったのは、原作を知る人間だからこそ気付けるほんの些細な変化なのかもしれない。
「何年ぶりだ? ヒマだったぜ仕事なくて」
 手に下げていた袋をクロロに渡し、フィンクスはずいっと一歩前に出る。中身は酒のようだった。ならば、つまみがいるだろう。そう考え、急ぎキッチンへと向かうも、なぜかクロロに名を呼ばれ隣の床をコンコンと叩かれる。テーブルの上には既に乾き物が広げられており、私の手料理など不要ということだ。淋しさは後回しにして、急ぎクロロの横へと座った。



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