From this day

□クロロの仲間たち(ノブナガ編)
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「痛い痛い痛い痛い!」
「……色気をどこに置いてきた」
「だって本当に痛い。ねえ待ってクロロ、私もっと上手い人がいい」
「……そうか」
「いったあ!」
「ああ、悪い。手が滑ったんだ」
 ベッドでうつ伏せとなり、その横に腰を掛けたクロロから刺青の施術を行われてまだ三十分も経ってはいない。焼けるような激しい痛みに苦しみ悶え、これは感じるどころの話ではなかった。きっと全神経が背中に集中してしまっているのだろう。ぎゅっと自分の枕を握り歯を食い縛るも、鋭敏になった痛覚に効果などあるはずもない。
「次はないからな?」
 腰を屈めるクロロから一言ずつ噛みしめるように囁かれ、慌てて振り返った先では予想以上に暗い瞳が冷ややかに私を見下ろしていた。なるほどこれは地雷かとようやく気付く。できればこの嫉妬、一生続いてくれることを願うのだから、やはり私はどこまでもクロロ一筋なのだ。謝罪を述べる私の頭には、一回二回とクロロの手が置かれる。それだけでもう、泣きそうになった。
「……ねえ、私の能力クロロしか運べないよ」
「そうだな」
「クロロしか運べない……」
「今更なんだ。承知の上だろ」
「なんでシャルナークさんにあんなこと言ったの……? 役になんて……立たない、のに……」
「それを決めるのはオレだ」
 ぐすっと鼻をすすり、今度こそ声を押し殺して泣いた。クロロのことが愛しすぎて、気が狂いそうだった。
「……何番彫ってるの」
「泣き止んだら教えてやる」
「ウボォーギンさん? パクノダさん?」
「さあな」
「クロロ、大好き」
「ウボォーだ」
 フッと笑みをこぼし顔を上げれば、クロロも似たような表情をしていた。こちらの視線に気付き、取り繕ったように口元を引き締める様子にはもう何とも形容しがたい感情が湧き上がる。見るなと言わんばかりに後頭部を押され、余計に笑ってしまった。
「あー……もうクロロのせいで苦しい」
「知るか」
「十一番、だね」
「……ああ」
 そして、刺青も終盤に差し掛かる頃。いよいよ我慢も限界に近付いた私の腕は、半ば無意識にクロロの枕を引き寄せていた。自分のものなど適当に放り、その中心にぐりぐりと顔を埋める。肺いっぱいに匂いを吸い込み、これだけで鎮痛作用があるのだから本当に不思議だ。クロロはいつだって五感全てで私を癒してくれると身体が知っているのかもしれない。
「……誘われていると捉えても?」
「違います。痛いんです」
「そんな姿を見せられて、興奮せずにいられる男はまずいない」
「え、ほんと無理。痛い」
「好きだろ、後ろから突かれるのが。イイ場所に擦れるんだもんな、ああほら」
「……っ」
「これだけで濡れた」
 ショーツの上から割れ目を押され、クロロは大層淫靡に笑う。もう恥ずかしすぎて何も言えなかった。一際強く枕を握った私に満足気な様子でいるクロロを睨み上げ、しかし互いに目尻は下がったままだ。
「安心しろよ、責任くらいはとってやる。何回イキたい?」
 こちら側に文句を言う資格などありはしない。こうしてキスを受け入れる時点で私の負けなのだ。










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