From this day

□クロロと力の使い方
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 能力の開発に取り組み始めてから一週間。この間に色々とわかったことがある。
 まず一つ目。指輪が合わさった際に移動できる距離は、私の想いと比例しているということ。そして、行き着く場所はクロロと私どちらにも選択権があるということ。更に、その場所の条件は訪れたことがあるか否か。これは選択権を持った者が指定できるものとする。
 クロロは言う。能力を自分のものにしたいのならば、いかなる可能性も否定してはならないのだと。
 言葉の通り、彼は私に様々なことを試すよう命じた。手始めに、何もしない状態でどれほどの距離を稼ぐことができるのか。リビングを想像しろと言われそのまま指輪を合わせれば、なぜかキッチンにいる私たち。そこでクロロは声を押し殺すように笑い、同時に思い浮かべた場合にはオーラ量の多い自分が優先されるようだと一人で納得している。さすがクロロ効率が良い。そう前向きに受け取らなければ正直やっていられない。
 結局この何もせずに移動する場合の距離はせいぜい一キロ程度にしかならなかった。所詮私の能力である。一キロでも十分すごいことだ。しかし、これでクロロが終わるはずもない。次にされたことといえば、腰を引き寄せ抱きしめながらの接触。「いつも行くスーパー」なんて言われ、三キロはあるけどと思った矢先に駐車場の片隅へと降り立った。
「グッド」
 クロロはいたくご満悦だった。
「OK、愛してるよ」
 身体を離し、囁かれながらの帰還。顔を赤くしへたり込んだ私の隣では、冷静なクロロがサラサラとペンを走らせている。
「この二つは、お前にとって同じレベルなんだな」
 なんてタチの悪い男だろうか。次にされそうなことを容易に予想できたので、私は急いでその場から立ち上がり指輪を外そうと手を掛けるが、
「もう少し付き合え」
 この表情ひとつで全てを許してしまいそうになる。私が逆らえないことを知ってやっているのだから、クロロは本当にずるい。
「ここからが本番だ。まずは触れるだけの、キス」
 さらりとクロロの黒髪が流れ、おとなしくなる私の唇にゆっくりとくっついた。
「OK。次は」
 腰がくだけるほどの、キス。
「ん……っ」
 恥ずかしいなどと思う余裕すらなく、眼前の風景が切り替わる。覚えのない場所ではあるが、公園、なのだろうか。片隅にはベンチがあり、幸い誰も座ってはいなかった。
「そう、いい子だ。もっと口開けて……」
 気持ち良すぎて脳が溶けてしまいそうになる。ああ、またひとつ景色が変わって、更に熱くクロロの舌が、意識が、遠、退く。
「おっと」
 倒れた先は、見慣れた自分の部屋だった。クロロに抱きとめられ、ぐるぐると回る視界に酸欠だったと知る。しかし、理由はそればかりではない。移動に応じてその都度かかる多大なる負荷。オーラ量の少ない私では、到底無茶なペースだったのだ。
「今日はこのくらいにしておこう。大体どの程度かわかったしな」
「……」
 今ここで怒ったら、それすらも材料にされそうで、私はただ黙って無理矢理笑顔を貼り付けた。










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