From this day

□クロロの誘い方
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 クロロとデートがしたい。誰よりも男前な彼を自慢して歩きたい。
 常日頃から思っていたことではあるけれど、クリスマスに断られて以来どうしても躊躇していた。結局はあの日、初めて抱いてくれたわけだからデート以上の記念日にはなったし、帰還一週間前には思い出作りに誘ってくれたりもした。当時は心に余裕もなく、あろうことか拒否してしまったけれど、でもやっぱり二人きりで出掛けてみたいというのが正直なところ本音ではある。帰宅途中、街中で出くわしたことは何度かあったし、能力の判明前には図書館だって一緒に行った。
 しかし、そうではないのだ。そうではない。あれをデートと呼んでしまうには些かお粗末すぎる。あの男前の隣を、仮にも恋人として歩くのだ。並んでいて恥ずかしくない程度にはメイクしたいし、ヘアスタイルだってバッチリ決めたい。手元には可愛い服と少しだけセクシーな下着たち。こちらの準備は万全だった。
 あとは、どうクロロにイエスと言わせるか。何もないのにデートがしたいなど、きっとただ伝えただけでは鼻で笑われて終わりだ。私の想いを知っているのだから、たまに少しは優しくしてくれてもいいのにとは思うけれども、ああいうクロロも含め全てが好きなのだから立場はいつだって私が圧倒的に下である。
 明日は休日。天気は快晴予報。絶好のデート日和を前に私は意気揚々と隣町へ向かった。もうこの辺のスイーツは調べ尽くしてしまったからだ。遠いので帰宅は夜になってしまうだろうか。でも明日のデートの為、絶品のプリンを用意し必ずイエスと言ってもらうのだ。

「どうしようかな……」
 一口にプリンと言っても様々だ。なんだかんだで一番彼が好むのは、ぷっちんとする安物のあれなのだが、勿論濃厚なものが嫌いというわけではない。
 ショーケースに並べられた十種類のプリンに加え、季節限定のものが二種。せっかくだから全部買っていってあげたいけれど自分一人で持てるかが唯一の懸念だった。せめて二個ずつは欲しいし、ならこっちは五種にして……いや、バレたら怒られるな。意外とプリンに関しては私より詳しかったりするクロロのことだ。多少傾けたところでケーキと違って崩れるわけではなし、頑張って持って帰ることにしよう。

 帰宅の道のりは頬の緩みが止まらなかった。絶対喜んでくれるってわかっているから。どれから手をつけるかな。私も気になるのあったから一口くらい貰えるかな。
 クロロのことばかり考えていた帰り道はあっという間だったけれども、時間はやはり遅くなってしまっていた。せめて一言声を掛けてくるべきだったかと思い直すものの、クロロが私の心配をするはずもない。





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