短編

□最悪な相手
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こんなの酷い。横暴だ。

「いーやーだー!!」

乙女の手を無理矢理引っ張るだなんて酷い。最低だ。男のクズだ。

「そんなに叫ぶ気力があれば大丈夫だ」

蓮君なんか嫌いだ。そんなに急ぎたいのならひとりだけで行けと思う。

「もう少しのんびり行ってもいいだろ。まだ旅を始めて1ヶ月も経ってねえんだからよ」

助けようとはしないが助け船だけは出してくれる。

「ホロホロ〜!」

一応私の唯一の味方だ。

とりあえず感激したような顔でもしておこう。

「…なんか俺の顔と違うとこ見てないか?」

私の視線はコロロに向けられていた。
当たり前だ。

「助けてもくれない奴に言う礼はないね」

ふん、と顔を背けると怪訝そうな顔をされてしまう。

「元はと言えば、「アメリカの風になりたいー」とか言って3日間ここで遊ぶとか言い出したお前が悪いしな」

ホロホロだってのんびりしているくせにそんなことを言う。

(バカホロめ…!)

実際に言うわけにはいかない。ホロホロの氷は冷たくて好きになれない。

そんなこんなでぶーたれていると、蓮君に冷ややかな目で見られる。

「そんなに遊びたいのならひとりで帰れ。邪魔だ」

ぱっと手を離された。愛想が尽きてきたのだろう。

流石の私も空気を読んで立ち上がる。こう見えて世渡りは得意なんだ。

「嫌だよ。私だってシャーマンキングになりたいもん」

蓮君を睨むと、ふっと笑われた。

「ならば早くしろ。まあシャーマンキングなるのは俺だがな」

「はあ!?俺だっつーの!」

何なんだろう。このふたりの自信は。


「おーい!いつもの喧嘩終わったかー?」

「もうすぐ目的地だよー!」

前方から葉とリゼルグ君の声。
私達の喧嘩は一旦中断された。

「もうすぐ!?じゃあ走る!!」

蓮君とホロホロを置いてとにかく走る。


「奴はいつになったら静かになる……」

「ならねえだろ。これ以上煩くはなりそうだけど」
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