騙し騙しの畏敬感
□第三廻
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あれからしばらくみんなと過ごして、少しは口数も増えた。
けれど私の言うことは要領が悪くて伝わらないらしい。そこは結局進歩していない。
「ハオ様!」
魂狩りから帰ってきたハオ様に駆け寄る。オパチョも一緒だ。
「もう慣れたみたいだね」
「はい!」
「紀はハオ様がいたらちゃんと笑うのですがね…」
「あれは美人に育つな」
「美人っつうか可愛いじゃねえか?」
「あの鳥もどき…またハオ様のことを…!」
ラキストだけ何か違うが、男衆が謎の会議を始める。
「子どもってすごいよねー」
マチルダ、通称マッチが微笑んで
紀を見ながら呟いた。
「紀可愛い…」
マリオン、通称マリも顔がほころぶ。
「いっつもああしてりゃいいんだけどね」
カンナ、通称カナがさらに加わった。
基本的に世話はラキストがしていたが、この3人も同じ性別の人間として比較的話しやすい相手。
今ではすっかり面倒見のいい姉のような存在となっている。
「ラキスト、もうすぐシャーマンファイトも始まることだし、しばらくは僕が紀の面倒を見るよ」
シャーマンファイトの始まりを告げるほうき星、羅ゴウがこの星を巡った。
もうすぐパッチ族がやって来るはずだ。
「ハオ様の術、また教えていただけるのですか?」
普段はラキストさんが巫力の使い方を教えてくれたりしているが、帰ってくると必ず、ハオ様は私に術を教えてくれる。
なかなかできなかったりもするけれど、ちゃんとできるようになるまでハオ様は教えてくれた。
「むらはあるものの、紀は飲み込みがいいからね」
たぶん誉められているのだろう。嬉しい。
「頑張って覚えようね、"しーくん"」
『その呼び方止めろ!』
一番の進歩は、何かを「嬉しい」と思えるようになったこと。
そのおかげで少しは明るくなれたと思う。"彼"に話しかけるようになり、勝手にあだ名までつけた。
「名前長いから…」
ひーくんの名は長い。いちいち呼んでいては時間がかかって仕方ない。
『まともに喋れるようになったかと思えば…ろくなことねえな!』
「紀が少し喋れるようになったんだ。喜ぶべきだろう?"しーくん"」
ハオ様がしーくんの名前を強調して言う。
ふたりの仲は一向によくならない。(原因はほとんどしーくんにある。)